ヒラリー・スワンクというと『ボーイズ・ドント・クライ』と『ミリオンダラー・ベイビー』で2度アカデミー主演女優賞を受賞した演技派女優として知られている。近年も『ブラック・ダリア』や『フリーダム・ライターズ』等の話題作に出演し、その存在感は衰える事がない。ヒラリー・スワンクが出演する映画を思い浮かべてみると、ロマンティック・コメディや女性客を狙った作品があまりない事に気付くと思うが、そんな彼女に異変が!『P.S.アイラヴユー(原題:P.S. I Love You)』というアイルランド人作家セシリア・アハーンの同名小説を映画化したもろに女性客狙いの作品に出演したのである。
熱愛の末に結婚し、子供も持たず長い事2人きりの結婚生活を送っているホリーとジェリーは喧嘩はするものの、マンハッタンのアパートで慎ましく暮らしていた。そんな彼らに悲劇が訪れる。ジェリーの脳に腫瘍ができ、ホリーは最愛の夫を亡くしてしまう。ジェリーの死を受け入れられないままホリーは30歳の誕生日を迎えるが、彼女へ誕生ケーキと共に夫からのメッセージの入った録音テープが届く。それ以来、ホリーに度々亡き夫からの手紙が届く様になり、生きる気力を無くしていたホリーは自分自身を取り戻していく…。
監督を務めるのはリチャード・ラグラヴェネーズ。テッド・デミと共同で監督した『アメリカン・ニューシネマ反逆と再生のハリウッド史』や『パリ、ジュテーム』の1編を監督した事で知られてる。また『フリーダム・ライターズ』も監督し、これでヒラリー・スワンクとは2度目のコラボレーションとなる。彼が今までに監督してきた作品はなかなかの出来、しかしどうしてまったく中身の無い『P.S.アイ・ラブ・ユー』を制作してしまったのか謎だ。確かに『フリーダム・ライターズ』もドラマチックな映画ではあったが、『P.S.アイラヴユー』はドラマチックに留まらずむしろファンタジーと言ってもいい。死んだ夫から手紙を受け取っていきながら人生を再生していく主人公は90年代だったら人々に受け入れられただろう。ホリー役はもう少し若かったらメグ・ライアンが適役だったろう。
主人公ホリーの夫ジェリーには『300』のジェラルド・バトラーが扮する。彼はこの映画の中では『300』とは全く違う印象だ。しかしながら、この役は基本的にはだれでも良かった。他にはホリーの母親パトリシア役にはキャシー・ベイツ、ホリーの親友デニースとシャロンにはリサ・クドローとジーナ・ガーション、ホリーの母が経営する店で働く男性ダニエルにはハリー・コニック・Jr.が扮する。また、ホリーがアイルランドへ行く際に親しくなる男性ウィリアムにロバート・ダウニー・Jr.とハビエル・バルデムを足して割った様な外見のジェフリー・ディーン・モーガンが扮している。彼は来年春の超大作『WATCHMEN』にも出演しているため、これからどんどん露出が増える事だろう。
これだけ多くの有名な俳優を起用しているが、この物語は極めて浅い。メグ・ライアンの『夢で逢えたら』等が好きな人は気に入るかもしれないが、ドラマチックに描き過ぎてうんざりしてくる。特にホリーが親友とアイルランドへ行った際に、3人でボートで釣りをするのだが、彼女達は慌て過ぎて、ギャーギャー言いながら皆でしりもちをつく。このシーンには苛立ちさえ覚えた。脚本を読んだ段階で絶対に面白くなるはずがないこの映画にどうしてヒラリー・スワンクは出演したのだろう。こういう映画は『セックス・アンド・ザ・シティ』だけで十分だ。
(岡本太陽)
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