◆スシ、天ぷら、忍者、ヤクザ!偏った日本のイメージ満載のB級エンタテイメント! (80点)
日本が誇る才能、井口昇。AV映画監督としてキャリアをスタートさせた彼は2003年の『恋する幼虫』で一般的にもそのカリスマ性が知られる様になった。その彼が北米向けに製作した映画『片腕マシンガール(英題:THE MACHINE GIRL)』が現在話題を呼んでいる。この作品は日本よりも先に、過激な日本映画を輸入していることで有名なビデオメーカー・FEVER DREAMSからアメリカでDVDが発売されたのだが、このとんでもない映画が逆輸入という形で日本で公開を迎える。
何がそんなにとんでもないのかというと、物語の主人公はセーラー服にルーズソックスという日本の典型的な女子学生。そしてスシ、天ぷら、忍者、ヤクザと海外からみた日本のイメージを惜しげもなく取り入れ、北米のオタク達が熱狂するコテコテのB級エンタテイメントに仕上がっているのだ。
両親が死に、弟ユウとたった2人きりの家族になってしまった日向アミ。彼らは慎ましく暮らしていたが、アミに突然の不幸が襲いかかる。ユウがイジメにより殺されてしまう。弟の敵を討つためにイジメグループのリーダーでヤクザの息子・翔を追いかけるアミだが、彼の父親率いる忍者ヤクザ集団に拉致され、拷問を受け左腕を失ってしまう。ヤクザ達から命辛々逃げ出し、アミが辿り着くのはユウと同じくイジメのよって息子を殺された夫婦スグルとミキのもと。はじめはミキとぶつかり合うアミだが、腕相撲を通し彼女と打ち解け、失ったものへの復讐を互いに誓い合う。町の修理工であるスグルがアミに鋼鉄の腕を作り、ミキがアミに戦い方を伝授。そしてアミは再びユウの敵討ちに出陣する。
『片腕マシンガール』はとにかくデタラメな内容で、グラインドハウス映画に似た雰囲気を持っているのが売りだ。この映画は冒頭のシーンから凄い。鎌で腕を切られて血飛沫がプシュー!マシンガンに撃たれて頭部が吹っ飛ぶッ!という現在ではありえない井口監督の演出で物語は幕を開ける。この映画の型破り度はオープニングから伝わって来るだろう。
また、この映画では女性が強いというのがポイントで、主人公アミ以外に、亜紗美扮する修理工スグルの妻ミキにも注目したい。彼女はアミに戦い方を教えるが、どうしてミキが戦い方を知っているのかは全く説明がされず謎。ただ彼女は強いのだ。ミキはアミの復讐のパートナーとなり忍者ヤクザのアジトに乗り込むが、彼女はチェンソーを振りかざし戦う。しかもそれを足に装着し、ロバート・ロドリゲスの『プラネット・テラー』でローズ・マッゴーワンが銃を足に身につけた様に、”片足チェンソーガール”に変身する。また、もう1人の主要女性人物で穂花演じるヤクザの組長の妻スミレも強烈なキャラクターでアミは彼女に苦戦を強いられる。スミレが組長よりも極悪なのがまた良い。
それから、最高だったのはアミが猛特訓の末に初めてマシンガンを身につけ、翔の子分である中学忍者隊に応戦するシーン。忍者隊の1人がアミに顔面に弾をガンガンに撃ち込まれ、血みどろのスケルトンになってあたふたするしていたのが非常に忘れ難い。このシーンには衝撃を覚えた。それ以外にも腕天ぷら、指寿司、顔面釘打ち、ドリルブラ等、反則とも呼べるネタが満載で、物語が終わる頃には昇天してしまうだろう。
はじめはなんとも奇妙なキャラクター達に違和感を覚えるが、最後までスーパー不自然な漫画の様な台詞や設定を貫く事で、最終的には物語の登場人物達に好感を抱いてしまう。特に血のりを全身に浴びまくってスタントなしで演技をしたアミ役の八代みなせには感服だ。また、彼女が戦う際にはスカートの中の白いパンティがチラリし、タランティーノが気に入りそうな演出だ。
北米のビデオメーカーFEVER DREAMSの持つ映画に『東京残酷警察(英題:TOKYO GORE POLICE)』がある。この映画は今夏開催されていたニューヨーク・アジア映画祭のラインナップに並んでいたのだが、チケットがソールドアウトするという快挙を成した。この映画の監督を手掛けたのは『片腕マシンガール』で特殊メイクや造形等を担当していた西村喜廣氏。彼の作品という事と、こちらも超スプラッター系という事で『片腕マシンガール』ファンが多く押し掛けた結果となったのだ。それだけに『片腕マシンガール』の影響は北米において非常に大きいのが分かるだろう。今後、井口昇監督のユーモア溢れるこの作品を皮切りに北米資本の作品達が逆輸入され日本でも人気を博すか気になるところ。『片腕マシンガール』はB級映画ファンやタランティーノ映画好きにはたまらない作品になることは間違いない。



























