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GONZO:The Life and Work of Dr. Hunter S. Thompson - 岡本太陽

アカデミー賞受賞作『「闇」へ』の監督が描く、故ハンター・S・トンプソンの作品と人生(85点)

 2005年2月20日、午後5時42分、ジャーナリストで小説家でもあるハンター・S・トンプソンが死んだ。コロラド州の自宅で銃で頭を撃ち抜いた自殺だった。享年67歳だった。家族が彼の亡骸を発見した時、彼は自身のタイプライターの前に座っており、そのページの中央には"counselor(カウンセラー)"の文字が書かれていた。

 日本では馴染みの薄いハンター・S・トンプソンとは一体どういう人物だったのか。まず、彼のライティングスタイルは「ゴンゾ・ジャーナリズム」と称される。このスタイルはライター自らが、物事の起こっている現場に出向き、それを体験し、自らがその物語の主人公になるというものだ。彼の著書にはありとあらゆるドラッグを車に詰め込みラスベガスに向かう旅をする、ジョニー・デップ主演で映画化もされた「ラスベガスをやっつけろ(びくびくゲロゲロ紀行)」等がある。また、彼は銃好きで酒好きの愛国家で、かなりのアナーキストとしても知られている。

 ハンター・S・トンプソンは1965年に発表されたヘルズ・エンジェルスについての記事で一躍有名になった。これはカリフォルニアのバイクギャングのヘルズ・エンジェルスに参加する体験記だった。その後数社に本の出版のオファーを受けたトンプソンは1966年に『ヘルズエンジェルス』を出版。金銭問題を巡り、ヘルズ・エンジェルスとは決裂してしまうものの、これは彼がどんな作家なのかを紹介するアメリカにおける非常に重要な作品となった。

 また、トンプソンは1960年代後期からは政治的側面からも執筆活動を行う様になる。1970年にコロラド州アスペンの保安官選挙に立候補して書いた「The Battle of Aspen」、交友関係があったジョージ・マクゴーバンが負け、再びリチャード・ニクソンが勝利を収めた1972年の大統領選挙を書いた「fear and Loathing on the Campaign Trail, 1972」等が政治に関する彼の有名な著書だ。

 『GONZO: The Life and Work of Dr. Hunter S. Thompson』は、そんな破天荒な彼の人生を追ったドキュメンタリー映画だ。この映画の監督を務めたのは『「闇」へ(原題:TAXI TI THE DARKSIDE)』で見事、2008年のアカデミードキュメンタリー賞を受賞したアレックス・ギブニー。彼はハンター・S・トンプソンの破天荒さにも注目しながらも、彼の記事、著書等に基づき、8ミリフィルムや数々の他の映像を交え、トンプソンという人物がどんなジャーナリストだったかを克明に描く。

 この映画の中で、ナレーターを担当しているのは、トンプソンを敬愛し、交友のあったジョニー・デップ。彼はテリー・ギリアム監督作『ラスベガスをやっつけろ』でハンター・S・トンプソンを演じた。また、このドキュメンタリー映画の中でデップはトンプソンの著書の朗読を行う。

 2005年にハンター・S・トンプソンは亡くなり、その年の8月に彼の葬式が行われたのだが、ジョニー・デップが彼の葬式費用を全て賄った。この映画の最後は彼の葬式シーンで、トンプソンが自分の最後の儀式をどの様に行いたいかを語る映像も登場する。それは彼のトレードマーク的な2つの親指の付いた拳の約50メートルの巨大な塔を建設し、彼の灰はその頂上から大砲で飛ばすというものだ。なんとも滅茶苦茶な企画だが、デップは友人トンプソンの理想の葬式を実現する。8月 20日の夜に彼の灰は色鮮やかな花火と共に天に放たれるのだ。

 最後の葬式まで人を驚かせたハンター・S・トンプソン。彼はその破天荒さゆえに人気があり、彼の存在はアメリカに大きく刻まれている。彼の生きている姿はもう見る事はないが、トンプソンは永遠に死ぬ事のないキャラクターであり、そのカリスマ性は今後も人々の間で語り続けられるであろう。

岡本太陽

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