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米映画批評

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

◆物語が格段に面白くなったデル・トロ監督のシリーズ第2弾! (75点)

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』と、今年の夏はアメリカンコミック原作の超大作映画ラッシュだ。2004年に公開された『ヘルボーイ』の続編にあたる『ヘルボーイ2/ゴールデン・アーミー(原題:HELLBOY ?: THE GOLDEN ARMY)』も今夏の期待作の1つなのだが、前作に比べ、飛躍的に物語が面白くなっているのだ。出演者は前作同様でロン・パールマンがあの赤い悪魔を演じる。

 前作で、リズと互いの気持ちを分かち合ったヘルボーイは現在恋仲の彼女との関係に悩まされている。どうしたらリズの機嫌が治るのか分からないまま、ヘルボーイ、リズ、エイブは何者かに襲撃されたという、ニューヨークのオークション会場に向かう。そこに到着する彼らだが、そのオークション会場は酷い様で、何千体もの歯が好物のトゥースフェアリーに占拠されていた。間一髪でトゥースフェアリーを退治する彼らは、次にそのトゥースフェアリーの出どころを探るため、ブルックリン大橋の下にあるトロールマーケットに侵入する。そして彼らは逃亡中のエルフの王女、プリンセス・ヌアラに出会う…。

 もともとこの『ヘルボーイ』の続編は2004年の第1作目が公開された時に、続編の制作が発表された。このシリーズは3部作化するとギレルモ・デル・トロ監督は考えており、2006年に第2作目をリリース予定だったのだが、その企画は2008年夏に延期された。しかし、ギレルモ・デル・トロは2006年に『パンズ・ラビリンス』を発表し、数々の賞にノミネートされた。デル・トロ監督が『パンズ・ラビリンス』で成功したため、『ヘルボーイ2/ゴールデン・アーミー』はより話題性を含んだ企画となり、彼の世界感が前作より随分生かされた作品になっている。そこで、結果的に2008年発表で良かったということになる。

 『ヘルボーイ2』が前作と決定的に違う点は、もはやナチスの物語ではなく、お伽話や民族学を取り入れた作品になっているという事だ。なぜなら、ギレルモ・デル・トロが『パンズ・ラビリンス』を発表した事と、『ヘルボーイ』の作家マイク・ミニョーラの現在の作風が神話を取り入れる傾向にあるからだ。『ヘルボーイ2』のストーリーはブルーム教授がヘルボーイの幼少時代に聞かせていたお伽話がベースとなる。

 そのお伽話に登場するのは、今回のストーリーの鍵となる3つに分けられたエルフの王冠。1つは人間が、残りの2つはエルフが所有しているのだが、この王冠が再び1つになった時、人間界を滅ぼしかねない強大なる力を誇る4900体のゴールデン・アーミーに指示を与える事が出来るのだ。その王冠の復活を願うのは、この『ヘルボーイ2』で敵役にあたるルーク・ゴス演じるプリンス・ヌアダ。アンナ・ウォルトン演じるプリンセス・ヌアダとは双子で、物語の中では、彼らは陰と陽の関係にあたる。ただプリンス・ヌアダは、家族間での関係がうまくいっておらず、妄想に支配されているだけで、完全なる悪ではない点が面白い。

 今回はエルフ他、地球の地底に存在する世界が登場するため、とにかく登場人物の数が多い。印象的なのは、トロールマーケットへ案内させられる猫食いばあさん、プリンス・ヌアダの相棒のミスター・ウィンク、ヘルボーイの死神等だ。『ヘルボーイ2』の上映時間は約2時間で、その中で数多くのキャラクターが登場するので、展開がかなりスピーディーに感じられる。

 また、前作よりもコメディ要素が強くなっている点がこの映画の魅力の1つだ。ロン・パールマン演じるヘルボーイ、セルマ・ブレア演じるリズ、ダグ・ジョーンズ演じるエイブはそれぞれだいぶコミカルになっており、遊び心が満載の映画になっている。特にヘルボーイとエイブが酔っぱらってラブソングを口ずさむシーンは爆笑を誘う。またそれだけではなく、そのシーンには彼らにも人間と同じ様な心があることを気付かされる。

 本作は前作よりも随分とファンタジックになっているのだが、それでもマッドサイエンス的要素も忘れていない。今回はヘルボーイ達が所属する超常現象捜査局に新たな仲間が加わる。それはヨハン・クラウス。彼はドイツの超能力者で幽体離脱中に実際の体を失い、それ以来物理的なものに入り込み、形を保っている。彼は今回のマッドサイエンティストにあたるのだが、他の捜査局のメンバーと同様、かなりコミカルなキャラクターだ。ヘルボーイに入り込んでいたスーツを破壊され、仕返しをするシーンは一気にヨハン・クラウスの好感度を上げる。クラウスは霊媒なため、実際の役者は演じていない。そこで、彼の声優を担当するのはアメリカのテレビアニメ『ファミリー・ガイ』の制作者でその登場人物ピーター・グリフィン、ストゥアート・グリフィン他多くの声を担当しているセス・マクファーレン。『ファミリー・ガイ』と『ヘルボーイ』の素晴らしいコラボレーションだ。

 『ヘルボーイ2』には『インクレディブル・ハルク』同様、大きな目玉的戦いが3つある。まずはトゥースフェアリーとの戦い、そして巨大な豆との戦い。この豆は宮崎駿の『もののけ姫』のダイダラボッチを連想させる。またその戦いの後には美しいシーンが用意されている。それから超常現象捜査局員vs.ゴールデン・アーミー&プリンス・ヌアダ戦がラストを飾る。この様な戦闘シーンも含め『ヘルボーイ2』は前作よりも随分とスケールアップしているため、視覚的に楽しめる作品となっている。『インクレディブル・ハルク』も2003年のアン・リー版『ハルク』より、視覚的に向上したが、ストーリーは俄然『ヘルボーイ2』の方が練られている。これギレルモ・デル・トロの語り部としての才能を感じられる作品だ。

 素晴らしいビジュアル、見応えのあるストーリーに加え、この映画が「外見は悪魔だが、心は人間になれる」という『ヘルボーイ』のテーマを忘れず挿入していた点にも感心出来る。ヘルボーイはこれまで超常現象捜査局の一員として人間達を救ってきた。しかし、人間達は彼の見た目が巨大な赤い悪魔なため、ヘルボーイを怖がり、厄介者扱いをする。そんなヘルボーイに本作では人間の味方につくか、つかないかの選択を強いられるシーンが登場。それが物語をより深いものにしている。また、この赤い悪魔が主人公の続編は目に見えるもので、わたしたちは判断していまいがちだが、それが100%真実かどうかは限らないのではないか、という鑑賞者に対する疑問を投げかける賢い作品である。

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