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THE WACKNESS - 岡本太陽

サンダンス映画祭で観客賞を受賞した94年のNYが舞台のある少年の物語(70点)

 十代の少年が主人公の成長を描いた映画はそれこそ山ほどある。2008年夏公開の『THE WACKNESS』はもやもやしたドラッグディーラーの男子高校生のひと夏を描く物語で、今までに観た事あるようでないような映画だ。なぜならドラッグがらみの映画だが、暴力シーンもなく、暗い映画でもない。むしろストーリーはコメディタッチでユーモア溢れる作品となっているのだ。

 1994 年夏、ニューヨークはヒップホップとマリファナの臭いに満ちていた。そしてその当時はルドルフ・ジュリアーニがニューヨークの街の風紀を正していた頃。そこにいたのは高校生のルーク・シャピロ。彼はマリファナのディーラーで、精神科医のジェフリー・スクワイヤーズと親交を持っている。ジェフリーは家庭に問題を抱えるルークにマリファナの代金の代わりに精神科医としてのセラピーをやることを提案するのだが、それがルークだけに留まらず、ジェフリー自身の問題も浮き彫りにしていく…。

 『THE WACKNESS』の監督と脚本を務めるのはジョナサン・レヴィーン。この作品が劇場用の彼の監督2作品目だ。レヴィーン氏自身が1994年に高校を卒業したということで、ドラッグは売っていなかったそうだが、この映画はかなり自分自身を反映した作品になっているはず。また、公開時期は『THE WACKNESS』よりも遅れているが、彼が2006年に監督した作品に『ネバー・バックダウン』に出演していたアンバー・ハード主演の『ALL THE BOYS LOVE MANDY LANE』がある。この作品はスリラーで、2006年のいくつかの映画祭では披露されたのだが、全国的な公開は見送りされている。『THE WACKNESS』を受けて近々公開されるとは思うが。

 そして、ジョナサン・レヴィーンが書き上げた脚本が優れていたのだろう、この映画にはベン・キングスレーやファムケ・ヤンセン等の名のある俳優も出演している。また急成長している若手の役者達が出演しているのもこの映画の特徴だ。特に主演のジョシュ・ペックに注目したい。子役でデビューした彼は以前はぽっちゃりだったが、成長と共に体は変化していくもので、最近はずいぶんとすっきりしている。その他の作品では、彼は『さよなら、僕らの夏』や『DRILLBIT TAYLER』等に出演している。『THE WACKNESS』の中ではトロ?ンとした目と半開きの口が印象的だ。

 その他の若手俳優は『JUNO/ジュノ』で主人公ジュノの親友を演じたオリヴィア・サールビーや『ディスタービア』や『ラスベガスをぶっつぶせ』のアーロン・ヨーが出演している。特にオリヴィア・サービーは精神科医ジェフリーの娘で主人公ルークの問題の種となる重要な役を演じている。その他の出演者にはジェーン・アダムズ、メソッド・マン、メアリー=ケイト・オールセンがいる。この映画の中で、オールセンはヒッピーのユニオンを演じているのだが、彼女はいろんなイメージが付きまとっているので、それはなかなか適役とは言えないものだ。バカ女にしか見えないし、ベン・キングスレーとの激しいキスシーンは見るに堪え難い。

 『THE WACKNESS』では音楽にも注目したい。94年はアンダーグラウンド音楽だったヒップホップがミュージックシーンのメインストリームになりつつあった時代。この頃はジュリアーニ市長によってニューヨークの人々は抑圧されていた。その事もヒップホップが人気を増していった1つの要因だろう。『THE WACKNESS』はヒップホップ音楽を聴くことがクールだった時代の物語、Nas、The Notorious B.I.G等の曲がこのもやもやしたルークの心を演出する。

 『THE WACKNESS』は主人公ルークが音楽に乗って歩道でダンスする時、歩道が光ったりと、ユーモア溢れる映像や切ないシーンもあり、なかなかの好印象を残す。それゆえに、2008年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞している。多くの人がこの映画の事を好きになるはずだ。ただ、この映画はマリファナ好きの年とった精神科医とマリファナ・ディーラーの高校生が自分探しをする物語で、その設定があまりに現実味がなさ過ぎて、彼らのもやもや感は理解出来るものの、感情移入は出来ないだろう。その事も踏まえ、この映画は、時にミュージックビデオの的な映像や詩的な映像も登場するため、現実とファンタジーの中間に位置している映画と言えよう。

岡本太陽

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