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いま ここにある風景 - 岡本太陽

写真家エドワード・バーティンスキー氏のレンズを通して見る衝撃の真実(85点)

© EDWARD BURTYNSKY

 『不都合な真実』や『11th Hour』等環境問題を訴えるドキュメンタリー映画が近年増えてきている。いずれにしてもわたしたち人類が地球にどんな酷い事をしているのか、そしてこれから地球がどうなっていくのか、わたしたちはどんな取組みをしているのか等を伝えるものである。そんな中、「わたしたちが地球にしてきたこと」を違うアプローチで綴るドキュメンタリー映画が誕生した。

 それは『いま ここにある風景(原題:MANUFACTURED LANDSCAPE)』というカナダ人写真家エドワード・バーティンスキーを追ったドキュメンタリー映画だ。バーティンスキー氏は世界中で産業の発展と共に変化を強いられてきた風景を撮り続けている写真家で、このドキュメンタリー映画は、彼の撮った写真や映像についての詳細をインタビュー等を交えて贈るジェニファー・バイチウォル監督作品だ。

 映画『いまここにある風景』の中でエドワード・バーティンスキーが訪れるのは現在産業的に急成長を迎えている中国。この映画のオープニングは中国のとある巨大工場の長回しで、はじめの数分はナレーションさえなく、ただひたすら巨大な工場の様子を見せつけられる。この工場の風景は非常に強いメッセージを感じさせるオープニングだ。

 そしてこのオープニングはある映画を思い起こさせる。それはフリッツ・ラングの『メトロポリス』。工場の中で人々がやる作業や拘束時間は徹底して管理されており、ここでは人は工場を動かす1つの歯車だ。こういうところで働いていると、毎日同じ作業の繰り返してマインドが麻痺してしまいそうだ。バーティンスキー氏はこの巨大工場で人々を風景の1部として撮っている。

 その後はバングラディシュの海岸で危険を伴いながらも廃船から鉄や原油等の資源回収が行われている光景や中国の巨大ダム建設の様子、また現在急速に発展を遂げている上海の様子が出て来る。この様にいくつもの視点から人間がどれほど環境に影響を与えてきたか、もしくは与えているのか、わたしたちはバーティンスキー氏のレンズを通して知る事となる。

 中国のダム建設を行っている作業員の1人が、働くのは「国のためだ」と言っていたのが非常に印象的だった。現在の中国を見るのは皮肉な事に戦後の日本を見ているような感覚に襲われる。日本をより良くするため、他の国の産業に追いつくため、また人々の生活の向上のため、わたしたち日本人が辿って来た足跡を中国を通して見ている様だった。中国人の見た目がさほど日本人と変わらない事もあり、日本人としてこの映画を観るととても奇妙な感覚に陥る。

 エドワード・バーティンスキー氏はこう言う、「産業の風景を見ることで、わたしたちはわたしたち自身、そしてわたしたちの地球に対する接し方を定義付けする事が出来る」と。わたしたちはこの世界がより暮らし易い世の中になる様に産業の発展を願った。だが今、産業開発を行った事で少なからずわたしたちは地球からその報いを受けている。しかし産業開発に関し、それは良いとも悪いとも言えない。なぜなら実際にわたしたちの生活は向上し、その生活を変えたくないからだ。ただ、この映画の様に今まで見た事のなかった現状を目の当たりにする事で地球に対する接し方を今1度違う角度から考え直す事も出来るはずだ。『いまここにある風景』は「わたしたちが地球にしてきたこと」を肯定も否定もしない非常に素直な作品だ。

岡本太陽

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