◆『マトリックス』三部作のウォシャウスキー兄弟が放つ待望の新作! (50点)
1967年放送のタツノコプロ制作アニメ「マッハGoGoGo」。わたしの親の世代のアニメで、わたし自身は再放送で数回観た事がある程度のアニメで、これといって特に思い入れのある作品というわけではなかった。この吉田竜夫原作のアニメはアメリカでも放映され人気を博し、あの有名な主題歌も歌詞を英語に換え、日本と同様つい口ずさんでしまうようなキャッチーなものになっている。
その「マッハGoGoGo」がハリウッドで実写映画化されるということで、2006年頃から制作がスタートした。アメリカ版のタイトルが使用され『スピード・レーサー(原題:SPEED RACER)』と呼ばれるこの作品には、あの『マトリックス』三部作のウォシャウスキー兄弟(アンディとラリー)が起用され、プロデューサーを『マトリックス』三部作で彼らとタッグを組んだジョエル・シルバーが務める。「夢の組合せ再び!」だが、『マトリックス』と決定的に違う点は、『スピード・レーサー』は家族向けというか子供向けの作品であるという事だ。
主人公スピード・レーサー役は日本でもついにブレイクが予想されているエミール・ハーシュが演じる。2002年公開の『イノセント・ボーイズ』で映画初出演をして以来、コンスタントに映画に出演し、昨年公開された主演映画『イントゥ・ザ・ワイルド』での演技を高く評価されアメリカでは演技派俳優としての一歩を踏み出した。インディペンデント系作品を中心に出演してきた彼にとってこの『スピード・レーサー』は初の超大作映画。シャイア・ラブーフ、ザック・エフロン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット等、アメリカで絶大なる人気を誇る若手俳優もスピード・レーサー役の候補に挙がっていたにも関わらずエミール・ハーシュがその役を射止めた。彼は今後日本でも人気に火がつく事は必至だ。
ウォシャウスキー兄弟は『マトリックス』で映像革命を起こしたが、『スピード・レーサー』でも『マトリックス』的要素を多く見る事ができる。『マトリックス』ではキアヌ・リーヴスを筆頭に人間の動きが魅力的だったが、今回はレーシングカーが非常識な動きをする。アニメ同様跳ねるのはもちろん、車に武器も仕込まれており、『マトリックス』の様な戦闘シーンをカーレースに見る事が出来るのだ。
またポップなヴィジュアルが非常に印象的で、アニメ的要素もかなり残している。特にレースシーンの映像はきらびやかで、大画面で観ると恍惚としてしまう。ただこの映画、ほとんどがVFXで作られている事と、スピードを競うカーレースが題材になっている事から、目の前で一瞬で起こる出来事に付いて行く事が出来ないという状況に追い込まれてしまう。
この映画のあらすじはこうだ。カーレースに夢中の少年スピード・レーサーは授業中もついついカーレースの空想ばかり。そんな彼はレーシングカーをデザインする父のもとに育ち、レーサーになるのはごく自然な事だった。スピードには兄レックスがおり、彼はカーレースのスターでスピードにとってはヒーローそのもの。しかし、あるレースでレックスは命を落としてしまう。悲しみに包まれるレーサー一家だが、時は経ちスピードの姿がカーレースの会場にあった。スピードは類い稀なる才能を持ったカーレーサーに育っていたのだ。そしてスピードは兄が命を落としたレースに挑む…。
今回のウォシャウスキー兄弟の映画は『マトリックス』の様に哲学的ではない。60年代のアニメを基に作られているので、子供向けの作品なのだ。故にストーリーに関してどれだけ興味深い作品なのか期待してしまうと、意気消沈してしまう可能性が高い。子供向け映画だという事を割り切って観る事が望ましい。
また、編集が悪いせいか、ストーリーを飲み込むのに時間を要してしまう。難解な物語でも哲学的でもないにも関わらず、特に物語のはじめの方は支離滅裂な展開にちょっと困惑してしまうだろう。この映画の上映時間は『スピード・レーサー』というタイトルが付いているが、2時間15分という長さ。子供向けの作品にしては長過ぎるし、大人は退屈してしまう。よりスピーディーな展開にして、30分くらい短縮出来たのではないだろうか。ただ迫力の映像だけがこの映画を救ってくれている。
ところで、エミール・ハーシュを支える助演陣も豪華なこの作品。スピードの恋人トリクシーにはクリスティーナ・リッチ(実際、もう少し若い方が良かった)、スピードの父と母にはジョン・グッドマンとスーザン・サランドン、謎のレーサーXには『LOST』でブレイクしたマシュー・フォックス、その他レインや真田広之も出演している。興味深いのはレーサーXにキアヌ・リーヴスも候補に挙がっていた事。結局キアヌはこの役を蹴ったが、もし引き受けていたらウォシャウスキー兄弟とのコラボレーションが再度実現していたかもしれない。
『スピード・レーサー』と言っておきながら、ストーリー展開が遅いという事からウォシャウスキー兄弟の『マトリックス』の3作目以来のこの映画は人々からの良い評価は望めないが、わたし個人としてはキラキラした映像の連続で子供時代に戻った様な気持ちになり、興奮した作品であった。特に最後、スピードがゴールを決める瞬間はスピードと自分の呼吸が一体化し、わたしも息を切らせてしまった。『スピード・レーサー』は是非巨大なスクリーンで、かつ真ん中よりも前の列で観て「体感」したい映画だ。

























