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僕らのミライへ逆回転 - 岡本太陽

映像の魔術師ミシェル・ゴンドリー監督による素敵なコメディ映画(75点)

© Newline Productions/Junkyard Productions

 フランス人映像作家ミシェル・ゴンドリー。アカデミー脚本賞を受賞した『エターナル・サンシャイン』が世界中で大ヒットし、映画監督としても認知されるようになった。他にも『ヒューマン・ネイチュア』『ブロックパーティー』『恋愛睡眠のすすめ』と興味深い作品を作り続ける彼が2008年の今年また新しい作品を発表した。『僕らのミライへ逆回転』というその作品は、主演にジャック・ブラックを起用し、エキセントリックなコメディ映画に仕上げている。

 ニュージャージー州、パサイクのBE KIND REWINDというVHSレンタルショップで働くマイク(モス・デフ)は、店のオーナー・フレッチャー(ダニー・グローバー)に聞いた、そのビデオ店のある建物で生まれたという伝説のジャズ・ミュージシャン、ファッツ・ウォーラーの話に魅了されていた。しかし、ある日ビデオ店のオーナーのフレッチャーは町のタウンオフィスから立ち退きを迫られる。もし自費で改装する事が出来ればまだ営業を続ける事ができるということで、彼はマイクに「ジェリーを店に近づけるな」という言葉を残し、時代に担った店への改装を目指し、他のDVD店の偵察の為しばらく店を空ける事にする。ジェリー(ジャック・ブラック)とはマイクの親友で、トレーラーに住みながら核活動を続けている。町の発電所が脳を溶かしていると信じているジェリーはある晩、発電所に忍び込むが予期せぬ出来事が起こる。次の日ビデオ店を任されているマイクのもとを訪れるが、ジェリーの様子がおかしい。どうやら体が磁化しているようだ。ジェリーのせいで店のビデオは全部消され、困惑するマイク。しかし、マイクとジェリーは消えてしまった映画を自分たちで作ることを思いつく…。

 今回この映画で描かれている、「スウェディング(Sweding)」という行為。これは自分たちで勝手に既存の映画をリメイクしてしまうというもので、実際はそれを商売にすると、映画のスタジオに全て権利があるため、法律に反する。この映画の中でマイクとジェリーはやむを得ず『ゴーストバスターズ』『ラッシュアワー2』『ロボコップ』等のハリウッドの大作をスウェディングする。しかし、制作者側がそれらの映画に敬意を払っていることが十分理解出来る。ただおもしろ可笑しくスウェディングしているのではなく、愛が感じられるのだ。

 またこの映画の面白い点は、映画のストーリーそのものよりも、スウェディングされた映画の方により興味が持てるところにある。ミシェル・ゴンドリーという人を凄いと感じるところに、彼が映画の中で様々なゴンドリー的スペシャルエフェクトを使っている事が挙げられるのだが、今回のスウェディング映画の中にはそれが所狭しと使われていた。特に感激したのは1枚のピザが、銃で撃たれた後に広がる血として使われていた事。改めてミシェル・ゴンドリーの映像の魔術師としての感性の豊かさに驚かされた。

 前作『恋愛睡眠のすすめ』もそうだが、今作『僕らのミライへ逆回転』も、映画というよりは洗練されたアートという言葉の方が相応しい。ニュージャージーにある何の変哲も無い郊外の町もミシェル・ゴンドリーの手に掛かれば、何とも言えないユーモアと愛嬌を兼ね備えた魔法の町に変わってしまう。そこへジャック・ブラックとモス・デフ演じる愛すべきキャラクターを登場させるのだから、わたしたちは自然と素敵な映画の世界に浸りたくなってしまう。

 多くの人に愛されている映画をスウェディングすることで、映画そのものに対する愛を表現しているこの『僕らのミライへ逆回転』。スウェディングは誰にでも出来る。誰にでもスウェディングできるということは誰でも映画は作れるということ。もしかしたらこの映画を観た後はあなた自身が映画を作りたくなってしまうかもしれない。あなたの住み慣れた部屋もアートの一部に変身させてみては?そしてその時は愛情を注いであげる事をお忘れなく。

岡本太陽

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