『パンズ・ラビリンス』でアカデミー賞にノミネートされた監督ギレルモ・デル・トロ。ファンタジーやホラー映画的演出を取り入れた秀作を世に送り出すスペイン人映画監督である。2004年にはハリウッドにて、アメコミ映画の『ヘルボーイ』の監督も務めたが、その続編となる『ヘルボーイ2/ゴールデン・アーミー』が今夏公開になる。しかし、それよりも前にデル・トロ監督ファンには良い知らせがある。彼が製作を務める映画が昨年末公開になった。スペインで記録的大ヒットした『永遠のこどもたち』というその作品は、ある孤児院を舞台にしたサスペンス・スリラーである。
海沿いにある、ある孤児院で、ラウラは楽しい幼少期を過ごしていた。だが、ある日、他の子供達を残し、彼女だけ引き取られてしまう。それ以来、その孤児院とは決別したラウラだが、30年後、夫のカルロス、7歳の息子のシモンと共に長い間使用されていなかった彼女が育った孤児院にやって来て、そこを障害を持つ子供達が暮らせる施設として開こうとする。ある日、ラウラはシモンと2人で海辺にある洞窟へ行く、一瞬息子と離れた彼女は、暗闇に向かって会話をしている息子を目撃する。その日以来、孤児院の中でも不思議な出来事が起こり始める。そして新しい施設のオープニングの日、突然シモンが消えてしまう。必至にシモンを捜そうとするラウラだったが、シモンの捜索と同時に、その孤児院にまつわる秘密をも明らかにしていくのだった…。
この『永遠のこどもたち』の監督を務めたのはフアン・アントニオ・バヨナ。今回の映画が初監督作品となる。ギレルモ・デル・トロにとても可愛がられているのだろう、『永遠のこどもたち』はデル・トロ監督の『デビルズ・バックボーン』と同じ孤児院が舞台。そしてこの『永遠のこどもたち』はアカデミー賞外国語映画賞のスペイン代表作品として選出されているのだが、この作品の米国での評価次第でギレルモ・デル・トロ同様、フアン・アントニオ・バヨナもハリウッドに進出してしまうかもしれない。
この映画、サスペンス・スリラーというジャンルに分けられるようだが、幽霊ものなので、ホラーの要素も含んでいる。ただし、怖いというよりは不気味な映画である。『海を飛ぶ夢』のベレン・ルエダが主人公のラウラを演じ、いなくなった息子を捜すのだが、不気味な雰囲気の向こうにある秘密や、登場人物達の感情、特に母の悲しみの念を見て取る事が出来、ドラマとして見る要素も多いにある。フアン・アントニオ・バヨナは今回が初監督であるが、この作品をジャンルに捕われない奥の深い映画に仕上げている。
孤児院という屋敷が映画の舞台、そして幽霊が出るという内容から、ニコール・キッドマン主演の『アザーズ』等を連想させるだろう。薄気味悪い雰囲気は確かによく似ているかもしれない。『アザーズ』の他には黒木瞳主演の日本映画『仄暗い水の底から』(あるいはジェニファー・コネリー主演『ダーク・ウォーター』)も、この『永遠のこどもたち』の雰囲気に似ている。主人公は母、薄気味悪さ、閉鎖感、そして感動のラスト。これらは、この3作品に全て共通している要素である。
この手の作品には必ず、「オチ」というものがあるのだが、『永遠のこどもたち』においては、それはまさに悪夢。感動的なラストではなく、後悔と悲壮感の漂う「オチ」のまま終わってしまえばよかったと思う人も多いと思うが、ギレルモ・デル・トロの『パンズ・ラビリンス』のラストもそうであったように、『永遠のこどもたち』のラストもファンタジックなものになっている。また、ストーリーの中に和製ホラーの様な薄気味悪さも十分にあるので、恐怖映画好きもギレルモ・デル・トロのファンも納得のいく作品になっているのではないだろうか。
この映画の中で、ある日、孤児院をソーシャルワーカーの老女が訪れるのだが、彼女は非常にショッキングな役であった。彼女にはグロテスクなラストが待っているのだ。見せないと思っていた映像を見せられてしまい、少々引いてしまう。「オチ」といい、そのソーシャル・ワーカーの結末といい、この『永遠のこどもたち』は意外にも期待を裏切る映画かもしれない。
(岡本太陽)










