プレボーイ誌に以前掲載された「Death and Dishonor」というある捜査についての記事がある。それを基に制作された映画がポール・ハギスが脚本監督を務める『告発のとき』である。
マイク・ディアフィールドはイラクでの派遣から帰国したが、その週末に突然姿を消す。マイクの父ハンクは、まだ息子はイラクにいると思っていたが、軍から彼の息子が帰国して数日の間に失踪した事を知らされる。ハンクは基地のあるニューメキシコへ赴き、捜査をエミリー・サンダースという地域管轄の捜査官に要請する。彼女にとってしぶしぶ引き受けた捜査だったが、マイクの失踪に関して不審な点がいくつも浮かび始める。息子の失踪の裏には何が隠されているのか?ハンクにとって想像を絶する事実を知る時が迫っていた。
ポール・ハギス。知る人ぞ知る脚本界のエース。『ミリオンダラー・ベイビー』、『クラッシュ』、『父親たちの星条旗』で3年連続アカデミー賞脚本賞にノミネートされている人間ドラマを書かせたら右に出る者はいない程の脚本家である。自身が監督した『クラッシュ』は第78回アカデミー賞作品賞を受賞している。今回の作品『告発のとき』も4年連続のノミネートとなるか注目である。
『告発のとき』の主演で失踪した息子を自身で捜査をするハンク・ディアフィールド役に扮しているのは、トミー・リー・ジョーンズ。寡黙な父にトミー・リー・ジョーンズがマッチしており、賞レースに参加しそうだ。彼の妻にスーザン・サランドン、そして捜査官エミリー・サンダースにシャーリーズ・セロンが扮している。この作品はアカデミー賞受賞俳優たちによる演技合戦映画である。その他にはジェームズ・フランコ、ジェーソン・パトリック、ジョッシュ・ブローリン、ジョナサン・タッカーが出演している。
それにしても、シャーリーズ・セロンという女優はちゃんと役作りをする女優だなとつくづく思わされる。今回の役は捜査官ということで、すっぴんに近く、冷静沈着な役。それにも関わらず美しさは変わらない。しかし浮くこともなく映画に溶け込んでいた。また彼女が劇中で走る姿が印象的だ。なぜなら、陸上選手が走る姿くらい美しかったからだ。元モデルとしても活躍する程の長身でスタイルも良いので、非常に様になっていた。『モンスター』で太った体を晒した女優とは思えない。
上のあらすじのところで、想像を絶する事実…と書いたが、ハンクにとってはそうなのだが、実は映画の鑑賞者にとっては結構予測できてしまうのである。犯罪ミステリーという要素も持ち合わせているこの映画、ただその要素はあまり深くはない。より人間ドラマ的要素が濃いかもしれない。しかしながら、事件を軸にストーリーが展開して行くため、目を覆う様なシーンが多少出て来る。感情移入し過ぎると、見る人によっては結構きつい映画になってしまうかもしれない。事実わたしがこの映画を観た時は途中で退席する人もいた。
『告発のとき』は真実を追い求めて行く映画だが、ハンクの得る真実は息子がどうして失踪したかという事より、むしろ、息子がどんな人物だったか、イラクで一体何が起きたのか、そしてハンク自身を顧みる、ということだった。前作の『クラッシュ』もそうだが、ポール・ハギスの作るものはリアルなのだが、良い意味でどこかファンタジックだ。そういうポール・ハギスのリアリティにばかり捕らわれ過ぎない姿勢が好きだ。
この映画の中で、ある兵士が、イラクにいた時は早くアメリカに帰って来たかったが、帰って2週間も経つと、戦地に戻りたくなった、と語っていた。なんだか非常に重い言葉だ。しみじみと、戦争とは何か?ということや、モラルについても考えさせられる映画である。
『告発のとき』のことを「感動系」と言ってしまう人もいるかもしれないが、作品のテーマはいくつかあるものの、結局のところ、この映画自体にメッセージ性が特にあるわけではない。結論がなかった映画だった。ポール・ハギスは、家族や戦争等テーマがいくつかある中で、鑑賞者なりの結論を導き出させようとしているのかもしれない。
(岡本太陽)
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