『ソウ』というサスペンス・ホラー映画といえば、もはや知らない人がいない程有名になってしまったが、もともとはインディペンデント映画の登竜門的存在のサンダンス映画祭で話題になった作品だった。アメリカ公開時も口コミで評判が広がり、公開の規模がどんどん広がっていった。続編も毎年の様に制作され、残忍なゲームを仕掛けるジグソウが登場するこのシリーズは今年4作目の公開を控えている。
その『ソウ』の生みの親で監督のジェームズ・ワン。マレーシア出身の彼は『ソウ』以降もコンスタントに映画制作に携わっている。今年は彼の監督作品が2つ公開された。ひとつはサスペンス・ホラーの『Dead Silence』、もうひとつはクライム・アクションの『狼の死刑宣告』だ。先日後者を観に行ってきた。
主演は『アポロ13』や『ミスティック・リバー』等でお馴染みのケビン・ベーコンで、彼はニック・ヒュームというある幸せな家族の父親役を演じている。ストーリーはというと、ギャングに無惨にも殺された息子の為に父親が復讐の鬼と化すというもの。その復讐の鬼と化すまでには段階があり、いきなり人間の心を捨てた鬼にならなかったところは良かったが、最後には頭を剃り、銃をいくつも持ち、最強の鬼になって乱射する姿はデ・ニーロの真似か?と思わされた。
息子を殺害され、正義という名の下に父は戦う。しかし果たして息子を殺した犯人を殺すことだけが父親の目的なのか?それが正義と呼べるのか?またトッド・フィールドの『イン・ザ・ベッドルーム』という映画でもそうだったが、残された家族にとって、1人の家族の欠如がその家族を今までのそれではなくさせてしまう。悲しみに暮れるか、何もなかったかの様に振る舞うか等の葛藤があるだろう。以上の様な人間ドラマ的な部分も掘り下げたかたちでストーリーが進むと観客は自然と引き込まれていったかとは思うが、この『狼の死刑宣告』はいわゆる普通のお父さんをクールなスーパーヒーローにしただけのバッドムービーであった。
『狼の死刑宣告』は展開的にも退屈する事はない映画だが、わざわざ映画館に足を運んでまで見る価値があるかと言われればクエスチョンマークが浮かんでくる。簡単に言うならば、夜中に家でソファーに座ってスナックでも貪りながらダラダラ観るくらいで丁度いい映画である。ただこれにわざわざケビン・ベーコンを出演させたのは凄い。
(岡本太陽)
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