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ボーン・アルティメイタム - 岡本太陽

マット・デイモン主演のジェイソン・ボーンシリーズ第3弾(85点)

 『ボーン・アイデンティティ』『ボーン・スプレマシー』のジェイソン・ボーンが主人公のシリーズの第3弾『THE BOURNE ULTIMATUM(邦題:ボーン・アルティメイタム)』が全米で公開された。第1作目は『ミスター&ミセス・スミス』のダグ・リーマンが監督し、第2作目は『ユナイテッド93』のポール・グリーングラスが監督している。両監督にとってボーンシリーズは大出世作となっている。さて、『THE BOURNE ULTIMATUM』は誰が監督したのだろうか?

 今回『THE BOURNE ULTIMATUM』を監督したのは、前回同様ポール・グリーングラス。『ボーン・スプレマシー』の大ヒットにあやかって、今回も続投となったのだろう。今作はアメリカで8月3日の公開だったが、週末の興行収入が約7000万ドルと大ヒットを記録している。

 ボーンシリーズといえば、やはりジェイソン・ボーン役のマット・デイモンだ。このシリーズが彼にとって初のアクション映画だったが、彼は3作とも大ヒットに導き、今やドル箱俳優と化した。『グッド・ウィル・ハンティング』で才能を見出されたのが遠い昔のことのようだ。またジョアン・アレンはパム・ランディ、ジュリア・スタイルズはニッキー・パーソンズを前作同様演じている。ジュリア・スタイルズは結構演技の幅が広くて好きな女優だ。

 このシリーズはいつも世界中を飛び回るが、今作でも元CIA諜報員ジェイソン・ボーンはロシア、ドイツ、イギリス、スペイン、モロッコ、そしてアメリカなどいろんな国に行き、自分に何が起こって記憶がないのか、多くの者に命を狙われながらも手がかりを探す。一体ジェイソン・ボーンは記憶を取り戻す事ができるのか?記憶を取り戻した先には何があるのか?彼の命は消されてしまうのか?

 この映画の優れている点は、なんといっても「賢い」ということだろう。極上のサスペンス的脚本である。普通のアクション映画を観る感覚で映画館に入ると、自分の予想の遥か彼方に連れて行かれてしまうに違いない。わたしもそうだった。撮影も素晴らしく、常に死と隣り合わせで、臨場感溢れる映像に圧倒されてしまう。

 危険を冒してまで、どうして記憶を消されたのかを探る事にも意味があるのか分からなくなるストーリー。悲しい宿命を背負いながらも謎を解き明かすために戦うジェイソン・ボーンの姿はまるで弾丸の様でありながら美しい。モロッコでのDeshという男のとの戦いでは、燃え尽きたプロボクサーを観ている様な感覚に襲われ、うれしい様な悲しい様な、なんとも言えない感情が込み上げてくる。彼の目の奥に痛みを感じるだろう。

 ジェイソン・ボーンはむやみに人を殺さない。アクション映画に於いて、人を殺してしまうのは簡単であるし、それが必然でもあるかのような世の中だ。しかし、この映画の主人公は頭と拳で戦う。その痛々しい限界を超えた姿に、いっそ殺してしまえば楽なのに、と観客に思わせてしまう。人を殺さずこれだけ、魅せる事の出来るアクション映画は他にはないだろう。非常に身震いした映画だった。今年のアクション映画の中では紛れもなくナンバーワンだが、今年観た全ての映画の中でも相当面白いものの中に入る作品だった。『THE BOURNE ULTIMATUM』に関わったチームに感動。

岡本太陽

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