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ブロークン・イングリッシュ - 岡本太陽

ゾーイ・カサベテス監督、パーカー・ポージー主演(55点)

 『ブロークン・イングリッシュ』という映画を観に行った。はじめこの映画のことを、アメリカ人が外国から来た人と恋に落ちる陳腐なラブストーリー程度にしか認識しておらず観るつもりはなかったのだが友人の誘いで観に行った。そしたらポスターの雰囲気とは裏腹に、意外と笑いどころも多々あり、ラブストーリーというよりもセンスのあるコメディとして成立していた。

 ニューヨークのとあるヒップなホテルで客の身の回りの世話などをする係のマネージャーとして働いている30代女性、ノラ。彼女は自分の仕事にも充実感を感じておらず、『Men hate me(男は私の事が嫌い)』と自分を罵る程、良い男性と巡り逢えないという不満も抱える。『Sex and the City(セックス・アンド・ザ・シティー)』を連想させるような、ニューヨークが舞台の男運のない女性の近年珍しくないどこにでもありそうな物語なのだけれど、この物語をシュールな笑いで包んだことに新鮮さを感じた。キャラクターのリアクションもインディペンデント系映画らしく控えめなのだ。

 この映画の監督はインディペンデント系映画の父とも呼ばれるジョン・カサベテスの娘のゾーイ・カサベテス。今作が初監督作品だ。また脚本も自身で書き上げている。ソフィア・コッポラとは違いわりと地味目のデビューだ。そして主役のノラをパーカー・ポージーが演じている。彼女は昨年まではずっと助演が続いていたのだが、今年になって『Fay Grim』、『ブロークン・イングリッシュ』と主演が続いている。昨年は大作の『SUPERMAN RETURNS(スーパーマン リターンズ)』にも出演し、なかなかインパクトのある役を演じたが、この『ブロークン・イングリッシュ』でも彼女は不幸な女性の役を印象的に演じた。パーカー・ポージー、彼女が演技派としてブレイクしそうな気配を感じた。

 わたしはこの映画を通して1つの考えさせられたことがあった。それはタイトルにもある通りブロークン・イングリッシュの事だ。この映画にはわたしが予想していた通り、外国人男性が出てきて、ノラと彼は恋に落ちる。片言の英語で話す人との恋愛のストーリーを描いているようなタイトルだが、このタイトル、そして映画はそれ以上の事を言っているように思う。そもそもブロークン・イングリッシュとは、片言の英語というよりも、文法的に不適切且つ時として無礼な英語と言った方がいいだろう。日本語でもわたしたちは頻繁に文法的には正しくない日本語を使用している。しかしそれでも会話が罷り通るし、相互理解もできる。むしろそれは普通のことなのだ。英語圏の国々でもほとんどの人は実はブロークン・イングリッシュを使用している。つまり日本であっても他の国であっても、言葉はブロークンなのだ。そんなタイトルのつけられた映画『ブロークン・イングリッシュ』。例えわたしたちの発する言葉がブロークンであっても、わたしたちは相手を理解する。むしろブロークンだからこそ伝えられる物もあると思う。きっとそれはわたしたちが外国語を話す時でも同じなのだろう。国境を越えてもわたしたちの言葉はきっとブロークンで、だからこそ伝えられる物があるに違いない。

岡本太陽

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