スペインのゾンビ・ホラー「REC」シリーズの3作目。途中からPOVを放棄し、大スプラッター大会になるのが痛快(点数 67点)
(C)2011 REC GENESIS A.I.E
謎の伝染病により、人々がゾンビ化していくスペインのホラー「REC」シリーズの第3弾。シリーズは主観カメラ(POV=ポイント・オブ・ビュー)によるドキュメンタリーのようなリアルな映像がウリだった。
1作目はアパートに舞台を限定、そこに取材で入ったテレビクルーのカメラ目線で全編を描き、POVの効果をうまく生かした秀作だった。
2作目はアパートに突入した警察の特殊部隊の隊員たちが、それぞれヘルメットにビデオカメラを装備しているという設定で、様々なカメラによる記録映像を組み合わせていたが、なぜかPOVによるリアリズムとは相反する、オカルトめいた悪魔憑きのストーリーとなり、怪作という印象だった。
そして3作目である。1、2作目はジャウマ・バラゲロとパコ・プラサの共同監督で、今回はプラサが単独で監督している。
スペイン・バルセロナで行われるコルドとクララ(レティシア・ドレラ)の結婚式が舞台だ。式の様子が、出席者や式場のカメラマンのカメラを通したPOVで描かれる。POVであるシリーズが、きちんと継承されている――と、思っていた。ところが、かなり時間が経過してから、出席者の一人がゾンビ化して暴れ、式場がパニックになると、カメラが床に置かれ、「REC3」とタイトルが出る。
そこから、普通の「客観映像」が始まる。驚いたことに、途中でPOVが中断されてしまうのだ。タイトルが出るのは、「もうPOVはやめました」という宣言のようだった。
もはや1作目のリアルな緊張感も、POVの意味もない。だが、ここからが実に面白い。ゾンビ化した出席者たちと、生き残った人々の大スプラッター大会がスタートするのである。花嫁はウエディングドレス姿でチェンソーを持ち、ゾンビたちを、切って、切って、切りまくる。ゾンビたちの手足が飛び、顔面が真っ二つ。俄然、楽しくなる。
花嫁が動きやすくするため、チェンソーで自らのウエディングドレスの裾を切ると、生足が見えて、一緒に逃げている男が「おっ」とか言ったりするのも可笑しい。緊急事態でも、男はそんなものである。
前半の退屈なPOV場面も、このスプラッター大会を際立たせるために生きてくる。ここからラストまでの怒涛の展開は、ブラック・ユーモアと残酷がてんこ盛りで、2作目のオカルト的な要素を保ちつつ、それが吹き飛んでしまうほど快調だ。
3作目ではあるが、1、2作目との時系列は逆転し、1作目と同時刻に別の場所で起きた物語という設定になっている。人々がゾンビ化する理由に悪魔が絡んでいる、ということだけ承知しておけば、1、2作目を見ていない人も楽しめるだろう。
汗まみれ血まみれで暴れる花嫁役のドレラが実に魅力的だが、彼女はプラサ監督の妻でもある。映画はカップルの愛も描きつつ、プラサ監督の妻に対する愛も強烈に感じさせてくれた。
(小梶勝男)