RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 - 福本次郎

◆エリート人生に倦んだ男が子供のころの夢を追う姿は、「人はどう生きるべきか」という指針を示す。映画は新しいことを始めるのに年齢を問題にするのは言い訳に過ぎず、やる気があれば大抵の目標は叶うことを教えてくれる。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 電車が動き出すと、前方の窓から順番に1枚ずつ灯りがともるように車内に日光が差し込むシーンが、幻想的な美しさをともなって見る者を物語にいざなう。エリート人生に倦んだ男が子供のころに憧れた夢を追うために会社を辞めチャレンジする姿は、「人はどう生きるべきか」という指針を示し、新しいことを始めるのに年齢を問題にするのは言い訳に過ぎず、やる気があれば大抵の目標は叶えられるとこの映画は教えてくれる。住宅地から海岸沿い、そしてのどかな田園風景に敷かれた単線レールの上を走るクラシカルな電車が、郷愁と共に古いモノを大切にする気持ちを呼び起こす。

 上司から工場閉鎖と人員整理を任された肇はリストラを成功させるが、母が末期がんと知って故郷の島根に帰る決心をする。そこでローカル鉄道の運転士に応募、面接、実技試験に合格して採用される。

 49歳にして、順調に歩んできたキャリアを捨てるのはどんな心境なのか。親友の死や母の介護が同時に重なり、メーカーに勤めながらモノづくりよりも経営に重きを置いてしまった社内での自分の立ち位置に嫌気がさしていたところに、さらに少年時代の思い出や娘や妻の本音を知るなど、さまざまな要素が集中し、やめ時と判断したのだろう。しかし、辞表を提出するにあたっての肇の苦悩や葛藤をほとんどスルーして、さっさとサラリーマンに決別するところが非常に潔い。

 運転席に座る肇の楽しそうな様子が心を和ませる。同じ線路の上を走っているのに、毎日が緊張感と刺激にあふれている。定時運行よりも困っている客に手を貸したり、息子ほどの年代の同期入社の車掌の蹉跌に理解を示したりと、年の功を見せたりもする。そんな、真面目な好青年がそのまま歳を取ったような役柄を中井貴一ははつらつと演じていて好感が持てる。母と息子、父と娘、夫と妻というさまざまな家族の関係の中で仕事とはいったい何なのかを考えさせられる作品だった。ただ、子供が勝手に運転席に入って電車を発進させる事件だけは作為が見え透いていて残念だ。

福本次郎

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