日々の出来事にはすべて人の思いがこもっていることを思い出させてくれる作品だった。(点数 60点)
(C)2011「RAILWAYS2」製作委員会
妻を労ってやるのが思いやりと考えている夫、しかし妻が求めていた
のは優しさなどではなく夫の理解。家族のために頑張ってきたと信じ
ている彼と、これからは自分のために時間を使いたい彼女は、それぞ
れが転機を迎えて決断を下す。峻嶮な山脈が町に迫り、単線を2両電車
が走る田園、そして人々の小さな日常。平凡な人生にもひとつひとつ
にドラマがあり、日々の出来事にはすべて人の思いがこもっているこ
とを思い出させてくれる作品だった。
【ネタバレ注意】
定年まであと1カ月になった運転士の滝島は、妻の佐和子から「看護師
として働きたい」といわれる。頭ごなしに反対すると佐和子は家出、
結婚指輪と共に離婚届を残していく。
30年以上も無事故無違反を続けた滝島は、新人の指導担当になっても
無駄口ひとつきかない。まじめそのものの実直さは運転士の資質に必
要なものなのだろう。だが、秩序や正確さを優先する性格は、家庭で
は退屈で融通の利かない夫・父と妻子の目に映っている。そんな滝島
の胸に、夫婦円満の秘訣はけんかした時はまず己に原因がないか省み
るという同僚の言葉が突き刺さる。
一方で、三行半を突き付けた佐和子もどこかで滝島が折れるのを期待
している。愛はもう冷めた、でもなんか使い慣れた道具のような愛着
をお互いに持っている。ふたりの微妙にすれ違う感情をカメラは丁寧
に掬い取り、年齢を重ねた者だけに許された味わい深い共感を呼ぶ。
(福本次郎)