パリという都市そのものが主役(65点)
外国人が描くパリは憧れに満ちているが、フランス映画のそれはいつもどこかメランコリックだ。余命わずかな青年ピエールの目を通して、パリに暮らす様々な人々の人生模様を描いていく。すべてが何気ないエピソードばかりだが、そのひとつひとつを愛おしく描く手腕がさすが。パリの名所もチラリと映るが、印象に残るのは名もない通りの石畳や小さなパン屋などありふれた風景だ。いつもコミカルなクラピッシュ作品と違って、難病や移民問題などにも触れるが、シリアスな内容にはせず、あくまでスケッチ風に流したことでパリという都市そのものが主役になった。浅い人間描写を魅力に変えるところがクラピッシュらしい。人生を愛そう。これが映画のメッセージだ。
(渡まち子)