PARIS - 福本次郎

人間関係から仕事上の悩みまで、文句を口にしながらも精一杯生を満喫している人々。思い通りにならないことばかりなのに、心を寄せる人に胸をときめかせるわずかな瞬間があるからこそ代わり映えのしない毎日に耐えられるのだ。(50点)

 きらびやかなイルミネーションが夜空に浮かび上がるエッフェル塔、そんな観光客が喜びそうな表の顔ではなく、描かれるのはそこに住む普通の人々の暮らし。家族、友人といった人間関係から仕事上の悩みまで、文句を口にしながらも精一杯生を満喫している。そして、彼らの生の源となるのはやはり恋。老いも若きも思い通りにならないことばかりなのに、心を寄せる人に胸をときめかせるわずかな瞬間があるからこそ代わり映えのしない毎日に耐えられるのだ。

 心臓の移植手術を待つピエールの世話をするために姉のエリーズが彼のアパートに越してくる。外出を控えているピエールの楽しみはバルコニーから街の人びとを観察すること。パン屋、青空市場、大学、そこからはさまざまな人生が交差する様子が見える。

 歴史学者と建築家の兄弟、パン屋の女主人と従業員、市場で働く男女、ソーシャルワーカーのエリーズ。さらに密入国しようとするカメルーン人の生活までカメラはとらえようとする。それぞれのエピソードの主人公にとっては大きな転換期ともいえる事件が起きるが、劇的な演出や音楽を一切廃した映像は感情的な盛り上がりに乏しい。しかも、うまくいったかにみえて最後の一線を越えなかったり、憧れの女学生を手に入れたと思ってもするりと逃げてしまったりと、決して予想通りには展開しない。登場人物の日々の営みを丁寧に掬い取る一方、あまりにも淡々とした平板なトーンにはいささか退屈を覚える。

 その後ピエールの元に移植手術の連絡が入り、ピエールはタクシーで病院に向かう。その後部座席の窓から久しぶりに街ゆく人を眺めるピエール。相変わらず世界は不平不満に満ち溢れている。それでももうすぐ死ぬかも知れないピエールの目には、生きていられるだけでも幸せなこと。人は自分に許された時間が残りわずかになって初めて命のありがたさを実感する。平凡でありふれた日常を延々と見せる意図が、このラストシーンに集約されていた。

福本次郎

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