◆エドガー・ライトのハリウッド進出第一弾(85点)
男の子達に人気のゲームや漫画の醍醐味は襲ってくる敵を次々と倒してゆくというもの。ブライアン・リー・オマーリー原作で、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のエドガー・ライト監督が映画化した『THE SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD』はまさにそんな作品。映画で人気のゲームと同じ様なスタイルを取ってしまったら惰性により飽きてしまうのが通常。しかし、本作はコメディ、アクション、ミュージカル、そしてラブストーリーと、いろんな要素がミックスされて作られた一瞬たりとも飽きさせない傑作なのだ。
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◆いろいろあった末に「こんにちは」と挨拶を交わす2人の表情が最高だ(65点)
道化師が本業のアベルとゴードン、ロミーの長編第2作は、不幸の連打にもメゲず、愛に生きる夫婦の物語だ。ダンス好きの教師夫妻、ドムとフィオナは幸せなカップル。ダンス大会で優勝した帰り道、自殺願望のある男のせいで車が事故を起こしてしまい、フィオナは片足を失いドムは記憶を失くす。その後、職場をクビになり、家は全焼。パンを買いに行ったドムは暴漢に襲われるが見知らぬ男に助けられ、ドーナツ屋を手伝うことに。一方、フィオナはドムが死んだと勘違いしてしまう。はたして2人は再び巡り会い、愛を取り戻すことができるのか…。
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© 2010「オカンの嫁入り」製作委員会
◆薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという小顔の女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定。家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの暮らしの原風景を見ている気にさせる。(70点)
同じ敷地内に母と娘が生活する家と大家のばあさんが住む古い木造家屋が庭を挟んで立っている。高度成長期以前に建てられたのか、時代から取り残された佇まいは、この3人の長く深く濃い人間関係を象徴している。訪れるのも近所の主婦だけの女の世界、薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという顔の小さな女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定と交わされる会話の内容は、家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの庶民の暮らしの原風景を見ている気にさせる。
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◆ノリの良い楽曲を歌うシーンが随所に散りばめられているので、観る者をゴキゲンな気分に浸らせてくれる(70点)
コンゴの首都キンシャサで活動するバンド“スタッフ・ベンダ・ビリリ”に迫る音楽ドキュメンタリー。監督は、フランス出身のフローラン・ドゥ・ラ・テューレとルノー・バレのお二人。
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◆何しろ身体を張ったギャグがすさまじく、その激しい動きは前衛舞踏のようにさえ見える(65点)
サイレント映画を思わせる、アナログ感満載の奇妙なコメディーは、アベルとゴードンのカップルによる監督・主演映画で、彼らの個性が炸裂している。ベルギー・ブリュッセル近郊に住む主婦のフィオナは、不注意から勤務先のハンバーガーショップの冷凍室に閉じ込められてしまう。翌朝、九死に一生を得て救いだされた時、フィオナはなぜか氷への愛に目覚めていた。自分の不在にさえ気付かない夫ジュリアンや子供たちを捨てて、仏の港町バルフルールに到着し、小舟タイタニック号の船長で寡黙なルネと共に、氷山を目指すのだが…。
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◆冒頭から取り調べ室で延々と続く映画オタクのポールの名作のセリフの連打に、あっけにとられる(45点)
ジャンルは刑事アクションだが、何しろ監督がクセモノのケビン・スミスなので、オタク趣味全開のトボけた映画になっている。NY市警で長年コンビを組む刑事のジムとポール。性格は正反対だが仕事の息はピッタリの彼らは、捜査中のミスで停職をクラうことに。そんな時、娘の結婚費用のためにレアものの野球カードを売ろうとしたジムは、強盗に遭い、貴重なカードを盗まれてしまう。そのカードを追ううちに残虐なメキシコ系ギャング“ポー・ボーイ”がからむ殺人事件に巻き込まれてしまうのだが、同じ署内の別の刑事コンビも事件を追っていた…。
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© 2010「オカンの嫁入り」製作委員会
◆舞台は大阪だが、登場人物の描写はありがちなコテコテでベタついたものではなく、感情を抑えた静かな演出なのが好感が持てる(60点)
軽すぎず、重すぎず。演出の抑制が絶妙な人間ドラマだ。初共演の大竹しのぶと宮崎あおいが母娘を演じるが、フワフワした雰囲気が共通していて本物の親子のよう。陽子と月子は、長年、母1人子1人で仲良く暮らしてきた。ある晩、陽子が、若い金髪の男・研二を連れてきて「おかあさん、この人と結婚することにしたから」と爆弾発言。あまりに突然の陽子の言葉に、月子は裏切られた思いで家を飛び出してしまう。周囲の者たちは、なんとか二人をとりなそうとするが、母娘にはそれぞれ、心に傷があったり、言い出せない秘密があって…。
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◆何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられる快感。褒められているうちにユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。(60点)
家では母に邪険にされ、会社では要領のいい後輩の陰で存在感が薄い。そんな、何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられ頼られ慕われている快感。褒められているうちに、彼女にしかできないユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。孤独と不安を抱えながら必死で生きていこうとするヒロインを安井紀絵が好演。映画は、大量に“女優”が使い捨てにされる AV業界の現実に触れつつ、そこにしか居場所を見つけられなかった女の絶望からの再生を描く。
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© 2010「BECK」製作委員会
◆ティーン・エイジャーが、音楽を通して自分の秘めたポテンシャルを自覚していく姿は、青春映画ド真ん中の展開で、ストレートに感動できる(50点)
打ち込むものをみつけた喜びとかけがえのない仲間との友情が熱く伝わってくるバンド系青春音楽映画だが、サウンドの演出には疑問が残る。平凡な毎日をおくる内気な高校生コユキは、ある日、NY帰りの天才ギタリストの竜介と出会い、バンドに誘われる。千葉、平、コユキの親友のサクも加わってバンド BECKが結成された。コユキは懸命にギターを練習し、内に秘めたヴォーカルの才能を発揮、バンドも少しずつ成功を重ねていった。そんな時、竜介のNY時代のトラブルと、ライバルバンドの敏腕音楽プロデューサーの陰謀に巻き込まれたBECKは、大きな試練に見舞われる…。
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◆1967年製作のホラー・オムニバス大作は今も色褪せない幻想世界の極み。中でもフェリーニ作品は背筋が凍る。(75点)
仏と伊の3巨匠が、エドガー・アラン・ポーの怪奇文学を映像化、1967年に傑作ホラー・オムニバス「世にも怪奇な物語」が誕生した。このほどこの作品が、デジタル・リマスター版として美しくお色直しされることに。デジタル化は、画質と音声がクリアになるメリットの他に、過去の名作を若い世代に紹介できる絶好のチャンスとなる。ホラー・オムニバスは、映画、TVを問わず人気だが、3話構成の本作は、クオリティーの高さで群を抜く。
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◆深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。素質のほかに不断の向上心を持つ者が生き残るバレエの世界を再現する。(50点)
同輩たちが寝静まった深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。まるでスポ根マンがさながらの合宿生活、素質のほかに誰にも負けない向上心を持つ者だけが生き残るバレエの世界を再現する。彼らに求められるのは革命への強い意志と国家・党への忠誠心、自分のために踊ることを禁じられた感情のないロボットのような表情が悲しい。物語は、1980年代に米国に亡命した中国人バレエダンサーの“現在”と“過去”を交互に織り交ぜ、思想や権力では決して魂の自由を奪えないことを描く。
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◆「ミックは計画的で、俺は朝起きて考える」とのキースの言葉が印象的(50点)
生ける伝説のロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズのアルバム「メイン・ストリートのならず者」の製作現場に密着した音楽ドキュメンタリー。南仏で行われたストーンズの曲作りと私生活、ライブなどを、貴重な写真と映像、インタビューで描いている。
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東京島 - 山口拓朗
© 2010「東京島」フィルムパートナーズ
◆無人島が備える「極限状態」というアドバンテージをどぶに捨てたような作品(35点)
簡単に筋を説明すると、無人島に漂着した22人の男と1人の女。さてこのあとどうなるでしょう? という映画である。「22人VS.1人」という確信犯的な設定からも察しがつく通り、ドラマのキーマンは、紅一点の主人公、清子(木村多江)である。もし桐野夏生の原作を未読の方であれば、鑑賞前に、彼女がこの過酷な状況下でどのように生き抜くのか、予測してみるといいかもしれない(ただしその場合、この批評は読まないほうが賢明です)。
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トルソ - 渡まち子
◆生身の男性にカメラが向かない分、ヒロコが大切にするトルソは繰り返し描かれるのが面白い(55点)
対照的な姉妹の再生を描く人間ドラマは、女性心理の深くてイタいところを突いている。アパレル業界で働く30代半ばのOLヒロコは、化粧もせず携帯も持たず同僚から合コンに誘われても断り続ける地味な女性だ。彼女は、顔や手足がない男性の身体の形をした“トルソ”という人形を恋人のように大切にして暮らしている。そんな彼女のマンションに、父親が違う妹のミナが恋人の暴力と浮気に耐えかねたと言いながら、強引に転がり込んでくる。図らずも共同生活をすることになった姉妹は、やがて少しずつ変化していくのだが…。
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◆頭を空っぽにしてただコレを存分に楽しむだけで良い(75点)
“オシリーナ”の愛称で知られる人気グラビア・アイドルの秋山莉奈を主演に迎えたバイオレンス系アクション・ホラー。様々な作品でアクション監督を務めた小原剛の『芸者VS忍者』に続く監督第二弾作品。
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