once ダブリンの街角で - 岡本太陽

2007年サンダンス映画祭で絶賛されたアイルランド映画(85点)

 今年のサンダンス映画祭で絶賛されたアイルランドのミュージカル映画『once/ダブリンの街角で』を鑑賞した。ミュージカル映画というと、近年ヒットした『シカゴ』や『ドリームガールズ』を思い浮かべる人は多いと思うが、これはフォークポップソングのミュージカルでハリウッドの豪華絢爛なミュージカル映画とは全く質の異なるものだ。

 ハリウッドのものとはどのように違うかというと、ストーリーがより現実的であるという点、それから言葉が非常に控えめに綴られているという点が挙げられるだろうか。全てが自然なのだ。またメインキャラクターの男と女は名前を持たない。最後のスタッフロールのところで、この二人の役名がGuyとGirlとしか書いてなかったので、そこではじめてわたしは彼らに名前が無かった事を知った。名前の有無に気付かない程ストーリーは自然なのだ。

 アイルランドの首都ダブリンで父親の経営する掃除機の修理店を手伝いながら、ストリートミュージシャンをしている男がいつものように路上でボロボロのギターを弾きながら自作の曲を歌っている。ある日彼が歌っているところにチェコ出身の女性が来て声を掛ける。
『この曲は誰を想って作ったの?』
『もう彼女はいないんだ。』
『亡くなったの?』
『いや、ただいないだけだよ。』
彼が掃除機の修理工だと知った彼女は翌日壊れた掃除機を持ってまた現れる。彼らは男の家に行く前に、とある楽器屋に立ち寄る。女性は直ぐさまピアノの前に座る。そして男にギターの演奏を催促する。彼女の父親はオーケストラで演奏していた音楽家だった、そして彼女自身もピアノが弾けたのだ。二人の息はぴったりで絶妙なセッションになる。二人は音楽を通して恋愛にも似た友情を育むのだが、互いの心の中は同じ方向を向いていなくて…。

 この映画をラブストーリーという人がいるかもしれないが、これは恋愛を語る映画ではない。出会った人と創造性とコミュニケーションを通して人間関係を構築していく映画だ。そして『音楽が表現する』ということを感じられる映画だ。

 ところでメインキャラクターを演じている二人は俳優を専門的にやっている方ではない。だから説得力ある演技ではないだろう。だが彼らの紡ぐ音楽はドラマティックで切なく、彼らの控えめな言葉がストーリーを説得力あるものにしているといっても過言ではないだろう。そしてこの映画の中には明瞭なテーマやメッセージはない。だがそんなものは不必要に違いない。もしそういうものがこの映画にあったとしたら、この作品を陳腐なものにしてしまう。音楽があれば人は耳を澄ます。誰かが歌っていれば人は聴き入る。『once/ダブリンの街角で』はそんな素朴で当たり前なことをしみじみと感じられる映画である。わたしにとってこの作品はずっと大事に取っておきたい映画になった。

岡本太陽

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