インド発の青春映画。もちろん歌も!(点数 95点)
(C)Madras Talkies
10月22日から、31日まで開催された『第28回東京国際映画祭』。
たくさんの映画が楽しめる祭典でした。
本作は『ボンベイ』の巨匠・マニラトナムの新作で、『ワールド・フォーカス』に出品された青春映画。
大都市ムンバイに暮らすカップルの物語で、彼らの出会いは強烈です。
ホームで、恋人とおぼしき男とけんかをして、線路に飛び込むと叫ぶ女性。
他の場所から彼女を見て、止めようとする男性。通過する電車。彼女はどうなったのか。
のっけからものすごくドキドキしてしまいました。
助かるに決まっているけれど、まさか? と思わせるオープニングです。
二度目の出会いは友人の結婚式。非難の目配せも何のその、ちょっと離れた場所にいる彼らは、あろう事かスマホで会話し始めます。
なんて身勝手。なんて迷惑。
だけど、我慢できない恋のほとばしりを感じさせ、ドキドキしてしまいます。
ゲーム業界で働く男性・アーディティヤと建築家見習いの女性・ターラー。
一目で恋に落ちた彼らの共通点は、「非結婚主義」ということ。そうなると、同棲するしかない彼らに、世間は甘くありません。
アーディティヤが間借りする大家は大反対ですし、それぞれの家族も反対します。
大家は、厳しい男ですが、認知症の妻を大切に思っています。
若者のほとばしる激しい恋と中年の落ち着いた、でも内面は激しく燃え上がる思いの対比もたまりません。
愛するということは楽しいことだけじゃないけれど、それども、愛おしいと思わずにはいられない。
ともに過ごした長い年月が、歴史となり、寄り添っていく姿にウルウルきてしまいました。
そして、若い彼らはというと、ターラーは迷います。
仕事か、結婚か? 昔なら間違いなく仕事を選んだはずなのに、と。
選ぶのではなく、両立すればいいじゃないと応援したくなっちゃうハズ。
青春コメディですが、かなり考えさせられる作品です。
(小泉 浩子)