2分先の未来予知ができる男は核危機を救えるのか?(30点)
ニコラス・ケイジ(『シティ・オブ・エンジェル』(98))にしろジュリアン・ムーア(『フォーガットン』(04))にしろ、演技力と存在感を併せ持つスターだというのに、いまだにこの手の迷作珍作またはB級作に出演してくれるというのは、妙におちゃめで好感がもてる。
ラスベガスでチンケなマジックショーをして暮らしているクリス(ニコラス・ケイジ)は、実は身の回りの2分先の未来を予知できる能力を持っていた。時折カジノで小勝ちする程度に使い、目立たぬようにすごしていたが、あるとき現れたFBI捜査官(ジュリアン・ムーア)は、その能力を見抜いた上で捜査協力を持ちかけてくるのだった。
現代ハリウッドらしい、VFXたっぷりのド派手アクション大作。交通事故から核爆発まで、多数のCGカットが出てくるが、それ以上にたくさん出てきてかつ私たちの目を奪うのは、もう一人のヒロイン・ジェシカ・ビール(『ステルス』(05))の深い深い胸の谷間。
この映画が根本的に間違っているのは、終盤にいくほど何でもありバーリトゥード状態になってしまう点。「2分先の未来が読める」=「2分先しか見えない」というのは、本作最大のウリでありスリル発生要素だが、いつの間にかその重要な決め事はどこかへ忘れ去られる。気づいたときには超能力のリミッターは星のかなたへテレポーテーション、観客は口ポカーン状態で置き去られる。きっと途中で監督か脚本家が交代して、引継ぎがうまくいかなかったのであろう。オー人事オー人事。
前半はいいのだ。何しろ2分間ルールを監督が覚えていてくれたから。主人公ニコラス・ケイジがその能力を駆使してカジノを脱出する場面。多数の追っ手の死角を次々と移動し、大胆かつ絶妙なルートで逃げ続ける姿は新鮮かつ驚きに満ちている。
ほかにも崖を駆け下りながら、一緒に落下する車や瓦礫の合間をスイスイ抜けていく大アクションも、手放しでほめたくなるほどの出来栄えである。
しかしそれも、結局は突然のルール変更で台無し。これならジェシカ・ビールの谷間を見ていた方が数段良い。
(前田有一)