NECK ネック - 前田有一

◆いい原石、もっとよく磨いていたら(65点)

 深夜のファミリーレストランにいくと、ドリンクバーで遊んでいる暇な若者をたまに見かける。普通の飲み物に飽きたのだろう、コーラとメロンソーダを混ぜてみたり、レモンを浮かべてみたりと斬新なオリジナルカクテル作りに夢中である。

 私のようなプロからみれば、これはドリンクバー初心者ならではのほほえましい風景。すぐに彼はそのカクテルにも飽き、やがてアイスコーヒーをまぜたり、コーヒークリームを演出に使って受けをとろうとするはずだ。沈殿したヘドロを再現して相模湖スペシャルなどと称する日も遠くは無い。誰もが一度は通る道である。

 ここで何がわかるかというと、意外な組み合わせが案外いけるということ。そしてそれを発見したときは、なんだかちょっとだけ嬉しくなるということ。もちろんその発見は苦労のわりに何の役にも立たないが、そんな小さな幸せを見つけるのも人生を楽しむコツといえる。

 少女時代の恐怖体験をきっかけに、幽霊研究にいそしむ大学院生、杉奈(相武紗季)は、自作の幽霊発生捕獲装置の実験台に、自分を口説いてきたアメフト部の首藤(溝端淳平)を採用する。だが実験はうまくいかず、彼らは人気ホラー作家の越前魔太郎(平岡祐太)とその美人編集者(栗山千明)を巻き込み、さらなる大掛かりな実験のため森の中の洋館へと向かう。

 ホラーと胸キュンラブコメの融合である「NECK ネック」は、ドリンクバー遊びから生まれた「意外といける組み合わせ」のような映画。やりつくされ、硬直したジャンルであるホラーに、ちょっとした新風を吹き込む挑戦だ。

 マニアックな方向に流れがちな最近のホラー作品としては、万人向けに徹したエンタテイメント性の高さも評価できる。主要な4人ともコメディー演技がうまいので、安定感がある。とくに栗山千明があの整った顔でバカをやると、あまりの落差に思わず笑いが出てしまう。美人は何をやっても人並み以上ということか。

 可能性を感じさせるチャレンジではあるが、これだけのメンバーを揃えながら肝心の笑いのテンポが細切れで、質量ともにものたりない。もっと笑いを増やし、ホットドリンクに浮かぶ氷のように時折ガチンコの恐怖シーンを入れ凍りつかせる。そんな感じにできたら傑作になれただろう。本作はそこまで徹底してジャンルミックスを研究した成果が見られず、ラブコメもホラー部分も中途半端。結局、他の邦画同様、アイデア=思いつきは良くても煮詰めていない。いわゆる低コスト体質の弊害である。

 とはいえ本作が先鞭をつけたこの不思議感覚、ぜひ誰かが突き詰めて、あきれる不協和シェイクとして完成させて欲しい。

 本作でいえば、ラストシーンのちょいとエロ感を感じさせるやりとりなどはとてもいい。この胸キュン感覚をもっと味合わせてくれたらぐっと面白くなるだろう。くれぐれも、やりすぎて相模湖スペシャルにならぬよう。

前田有一

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