MAKOTO - 前田有一

映像に凝る前にストーリーの組み立てをしっかり(35点)

 郷田マモラ(『きらきらひかる』の原作者)の同名漫画を、「踊る大捜査線」の脚本家、君塚良一が初監督で映画化した作品。

 法医学研究所に勤める主人公の監察医(東山紀之)は幽霊を見る事ができる。何かを伝えようとする彼らの声を聞き、その死の真相を突き止める事が、いまや彼のライフワークになっていた。しかし彼は、半年前に交通事故死した妻(和久井映見)の幽霊に対してだけは、いまだまっすぐ向き合うことができずにいた。

 「泣けるホラー」という宣伝文句は映画版『MAKOTO』には当てはまらない。泣ける映画とは思えないし、ホラー映画というジャンルにくくるのもどうなのか。また、君塚良一の名前から娯楽映画を期待していくと、まったくそうではないので肩透かしを食らうだろう。

 さて、間違った検死をされた死体は幽霊になって無言の抗議をしてくるので、主人公とその周辺の刑事(哀川翔)らにとって、「幽霊がみえる」という主人公の力は一見便利な能力だ。

 しかし、その能力のせいで主人公はときにつらい目にあったりする。死の真相を解き明かすことが、必ずしも遺族のためにならないという現実を知ったときがそうだ。その事実は主人公がのちにそのまま体験することになるが、そうしたエピソードをもって、信頼とそれが崩れたときの苦しみ、許すことの意義などをやや哲学的に描いて見せたドラマだ。

 正直なところ、こうした地味なテーマを、監督さんがあれやこれやと技法にこった映像でゲージュツ的に描きたいならば、まわりくどい超能力設定などはいらなかった。せっかく特殊な面白い設定があるのだから、もう少し観客の興味を引く展開にして、そこにサスペンスのひとつでも盛り込んで見せたらよかったのではないか。初監督で張り切っているのはわかるが、映像美に凝る前にストーリーに凝ってほしい。

 『MAKOTO』のエピソードはどれもそれなりに興味深い題材、事件のはずなのに、実際に見るとまったく面白みがない。役者の台詞も聞き取りにくい。単なる絵作りのためだけにデザインしたかのような背景、舞台が見受けられ、作り物感が強い。あえて現実感をなくすよう演出したとはいうが、結果としては芝居じみた印象になってしまった。

 この内容ではお客さんも納得すまい。期待の初監督作ではあったが、残念ながら次回作に期待、といったところだ。

前田有一

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