LYMELIFE - 岡本太陽

◆1970年代後期、ライム病感染の恐怖の中で徐々に崩壊していく家庭と少年の心(60点)

 日本ではあまり聞く事はないが、米国やヨーロッパではよく知られている全身性疾患のライム病。これはマダニに刺される事によって感染する細菌感染症で、アメリカ旅行向けの日本の旅行本等にはしばしば、「道を歩く際には、草木にはなるべく触れない様に注意しましょう」等、ライム病予防を促す注意書きを見る事がある。映画『LYMELIFE』はそんなライム病が流行し始めた1970年代ニューヨークを舞台にバートレット家とブラグ家の家族の崩壊を通し、バートレット家の純粋な次男スコットの成長を描く。この映画は出演者でもあるアレック・ボールドウィンが製作、マーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、昨年のトロント映画祭でプレミア上映された時には批評家連盟賞を受賞している。

 70年代後期、ニューヨーク郊外ロングアイランドに住む15歳のスコット・バートレット(ローリー・カルキン)は愛の冷めきった両親ミッキー(アレック・ボールドウィン)とブレンダ(ジル・ヘネシー)と暮らしている。心優しいスコットは学校ではよくいじめられているが、幼なじみのエイドリアナ(エマ・ロバーツ)はいつも彼の味方になってくれる。エイドリアナに密かに想いを寄せるスコットだが、軍隊に所属している兄ジミー(キーラン・カルキン)の久しぶりの帰郷がスコットにバートレット、ブラグ両家の秘密を教える引き金になるのだった…。

 ミッキー・バートレットは不動産業を営む荒っぽい性格の父親。ブレンダはライム病を恐れてダニが中に入り込まない様にスコットの服の襟や袖をテープで巻き付ける少々過保護にも見える母親。両親の抱える問題は分からないが、口論の耐えない家庭に育ったスコットは、エイドリアナだけが彼の心のよりどころになっている。スコット扮するローリー・カルキンはカルキン家の末っ子で、今までに『サイン』『ゾディアック』等の大作に出演している。彼の魅力は自然体の演技。特に本作の様なインディペンデント系映画ではそれが十二分に発揮され、感情移入しやすいキャラクターを作り上げる。

 ブラグ家のエイドリアナはさばさばしたちょっとマセた女の子。ティモシー・ハットン扮する彼女の父チャーリーはライム病と診断され仕事が出来ない。普段は猟銃を持ち鹿を探しに近所の林に出かけるか、家の地下の暗がりで鹿の絵を描いている。シンシア・ニクソン扮する母メリッサは夫が働けないため、ミッキーに雇われている派手な女性。彼女は役立たずな夫にも、生意気な娘にも苛立っている女性なのだが、ミッキーだけは彼女の話を聞いてくれる。シンシア・ニクソンという女優は『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダで有名で、本作でもやはり彼女の出演シーンはあのテレビ番組を連想させるが、ミランダではないシンシア・ニクソンを見せようとしている努力が感じられる。これから映画での露出が増えそうな女優だ。

 『LYMELIFE』の監督脚本を務めるのはデリックとスティーヴンのマーティニ兄弟で、本作は彼らの体験が基になっているという。両親の中が悪くなってゆくにつれ、子供の心が病んでいくという展開はどこかノア・バームバックの『イカとクジラ』を連想させ、その映画同様コメディタッチで物語は綴られていく。本作で最も重要そうに見えるのはチャーリー・ブラグ。鹿や銃、そしてライム病等、彼は危険な要素をいくつも抱えており、精神的にも病んでいる彼が決定的に物語と関連するシーンがない。ティモシー・ハットンのダークな演技は評価に値するが、チャーリーというキャラクターをうまく映画の結論に結びつけるという作業が必要だったのではないだろうか。

 本作では度々プラスチックのモデルハウスや人形のシーンが登場する。映画の中の2つの家族とは対称的にプラスチックのモデルは理想的な郊外の生活を映し出す。そして主人公スコットは壊れていく家庭の中で、父親、母親、兄の本当の姿を知り、現実というものに初めて直面する。彼は少年から大人へと変わろうとしているのだ。スコットが大人へと成長する過程で、彼が頭がおかしいと思っていた母親の気持ちを理解する。これはジーンと感じてしまうシーンであった。

岡本太陽

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