Life 天国で君に逢えたら - 前田有一

作り手が本人に遠慮してはだめだ(30点)

 最近亡くなった人の伝記映画は、関係者が多い上にそれぞれの悲しみの記憶も新しいため、いろいろな意味で作るのが難しい。

 妻(伊東美咲)と二人、極貧生活に耐えながらワールドカップに参戦しているプロウィンドサーファー飯島夏樹(大沢たかお)。だが敗北続きで賞金が得られぬため、ついに電気等も止められ、家賃も払えず夫婦は野宿生活をすることに。夏樹は次を最後の試合と決め、夢のすべてを賭けて挑むのだったが……。

 05年に若くしてガンで亡くなった飯島夏樹の闘病生活と人生は、本作の原作となった小説『天国で君に逢えたら』とエッセイ『ガンに生かされて』に感動的に綴られている。本人も生前、自分の人生の映画化には意欲を燃やしていたという。

 難病と戦いながらそのバイタリティは凄いと思うが、これは、現場で映画を作る方としてはやりにくくてたまったものではないだろう。じっさいこの映画からは、いたるところに本人または関係者に遠慮をしている様子がありありと伺える。

 だが、伝記映画でそのようなつくりのものに、傑作があったためしがない。誰にも失礼のないように……と無難な内容および描写で作られたこの映画を見ても、私にはまったく来るものがなかった。

 だいたい伝記映画というものは、本人の人生に起きたことを映像で紹介して終わり、というものではない。それでは没後のテレビのニュース特集と同じだ。

 その人物の内面まで監督=作家が踏み込んで探り、人物の生き方になにがしかの発見や驚きというものを見出してこそ、わざわざ作る意義があるのではないか。そういう「何か」がなければ、それこそ関係者の自己満足に過ぎず、彼等以外見る価値はないと私は思う。そして『Life 天国で君に逢えたら』にはその「何か」がない。

 小手先の演出、小手先の脚本、みな空回りである。だいたい、余命3ヶ月と知ってショックを受けた奥さんの周りをカメラがぐるぐる回り、やがて人がたくさん往来する道のど真ん中で崩れ落ち、うずくまる。そんな安っぽい絵はいくらなんでもナシだろう。さすがに、韓国映画のような間抜けなお涙頂戴という形にはなっていないものの、本気でひとりの人間に言及するという覚悟、真摯さは認められない。

 飯島夏樹氏の生き方や人生についてうんぬん言う前に、そうした映画としての腰の軽さに辟易してしまう、そんな一本であった。

前田有一

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