◆抜けるような青空とエメラルドグリーンの海、風をセイルいっぱいに受け波を滑っていく。ウインドサーフィンにとりつかれた主人公スリルとスピードを体感させてくれるのかと期待したが、映画は凡庸な闘病記がメインになっている。(40点)
抜けるような青空とエメラルドグリーンの海、風をセイルいっぱいに受け波を滑っていく。ウインドサーフィンにとりつかれた主人公が、妻とふたり世界中をドサ周りをしながら夢を追っていく過程で、そのスリルとスピードを体感させてくれるのかと期待したが、むしろ病魔に冒された後の闘病記がメインになってしまっている。なぜもっとウインドサーフィンの陶酔感を語ろうとしないのだろう。レースシーンにも工夫がないし、カメラワークは凡庸。波に乗り風を受ける者だけが得るエクスタシーを描いて欲しかった。
プロウインドサーファーの夏樹はなかなか勝てず貧乏暮らし。妻の寛子はそんな彼を支えている。やがてW杯で初優勝、その後勝てるようになり4人の子にも恵まれるが、夏樹の体はガンに蝕まれていた。
結婚式で礼服のままウェディングドレスの妻をサーフボードに乗せるなど、夏樹はロマンチックなことが好き。一方で実力が認められると、試合のために家族と過ごす時間を犠牲にして娘とギクシャクしてしまう。夫として父親としてできることとできないこと、その葛藤の間で悩む夏樹からはいつしかウインドサーファーとしての魅力が消え、後半はありきたりのガン闘病映画になってしまった。
伊東美咲の場違いな演技力が足を引っ張っている。4人も子を産んだ母親には到底見えないし、貧乏に耐える姿にも切実さがない上、涙もうまく流せない。ごまかしの効くテレビでは耐えられても、じっくりカメラを据える映画では完全なミスキャストだ。また、夏樹の先輩の葬儀のシーンで、参列した寛子に未亡人が声をかけるシーンがあるが、なぜか夫をなくしたばかりの未亡人が「あなたがしっかりしなさい」と励まし、慰める。これは普通、寛子が未亡人にかける言葉だろう。確かに夏樹が末期ガンで精神的にまいっているが、それでもまだ夫は生きているのだ。不思議なシーンだった。
(福本次郎)