懸命に生きる女と落ちぶれてしまったギタリストの恋(点数 60点)
©レジェンド・ピクチャーズ
ラブストーリーは大きなジャンルです。
ロマンスを映画の主軸に置いても戦争、事件を背景とした作品も多く、他ジャンル映画のミュージカル、ホラー、SF映画などにも「ラブロマンス」を絡めた作品はたくさんあります。
更に、悲劇、喜劇、三角関係、不倫、同性愛など様々な状況・視点もありますので、どの作品が優れているとは言い難いのですが、今回は、夢を捨てた世捨て人風情の男と現代病ともいえる双極性障害の二人にフォーカスしたオフビートな一篇です。
さて、2014年に連続公開されている「ラブ・ストーリーズ」とは、時代に左右されず互いに相手を慕う「恋愛」はシンプルで美しい感情で、その「愛を探る」刺激的なアプローチが魅力の本シリーズの中で、筆者お気に入りのVol.3『LAST LOVE/愛人』をご紹介します。
「ラブ・ストーリーズ」の他には、Vol.1『マリアの乳房』、Vol.2『逢いびき』が公開済み。Vol.4『妻が恋した夏』が公開を控えています。
○ざっくりストーリー
岩田(火野正平)はギタリストの道を諦め、マンションの管理人の仕事につきます。掃除やゴミ処理、住民の苦情など地味な仕事を黙々とこなす毎日でしたが、住人の評判は良く、一人静かに慎ましく過ごしていたのですが、ある日、彼は泥酔して帰宅した住人の若い女ユミ(桜木梨奈)を介抱します。
彼女は本職のダンスでは食べてはいけず、「パパ」と呼ぶマンションの一室の借主でもある年配の男の愛人をしていました。
しかし、ユミはパパと呼ぶ男の妻に関係を知られ、部屋も追い出されます。
かねてから患っていた双極性障害の症状は悪化し、自我を失っていくユミを突き放せない岩田は、仕事を捨ててユミと放浪の生活をはじめます(このあたりの流れは名作チャップリンの『ライムライト』を連想させます)。
そんな中、あるライブハウスで久しぶりにギターを手にするのです。
するとユミがそれに合わせて踊りはじめ、孤独な二人はいつしか互いの存在にすがりながら、あてのない旅を続けるのです。
人は一人では生きては行けない。誰かと寄り添って生きていくあたたかさを感じさせる佳作で、昭和のドン・ファン(笑)火野正平の起用が大当たりで とても良かった……。
■2014年 日本映画/上映時間:102分/監督・脚本:石川均/出演:火野正平、桜木梨奈、広瀬彰勇、ぶっちゃあ、鈴木智恵、三村晃弘、佐藤真澄、平家秀樹、五東由衣、青山明、保坂尚希ほか
オフィャルサイト:http://lovestories.jp/
(中野 豊)