レイクビュー・テラス危険な隣人|映画ジャッジ!批評家による口コミ評判辛口映画情報

レイクビュー・テラス危険な隣人 - 岡本太陽

サミュエル・L・ジャクソンが隣人にしつこく嫌がらせする（65点）

　例えば、新しい家やアパートに引越して新生活を始めようとしている時に隣人が嫌がらせをしてきたらあなたはどうするだろう？すぐに次の引越し先を決めるか？それともその隣人に戦いを挑むか？『レイクビュー・テラス危険な隣人』はこの様な馴染み深い題材を基に作られた作品で、そのテーマからも想像が付く通り、観ていると苛立ちを覚えさせる映画だ。

　白人と黒人の若い夫婦クリスとリサ・マットソンはロサンゼルス市の丘の上にあるプール付きの美しい家に引越して来たばかり。彼らは素敵な新生活を始めるが、隣に住む警察官のエイブル・ターナーは白人の男が黒人女性と結婚している事が気に食わない。そしてエイブルはその夫婦の事を監視し、遂には嫌がらせを始める。理性的に問題を解決しようとするクリスだが次第に我慢の限界を越え…。

　本作の監督は『ベティ・サイズモア』『ウィッカーマン』のニール・ラビュート。彼は俳優のアーロン・エッカートとは大学時代からの友人で、エッカートが出演したラビュートの初監督作品『In the Company of Men』は映画祭等で話題になった。『レイクビュー・テラス危険な隣人』では隣人の嫌がらせという使い古され、誰ももう興味が湧かない題材を扱っているが、次に何が起こるのか知りたいと思わせる作りになっており、意外にも欠伸は出ない。

　警官エイブル・ターナーに扮するのはサミュエル・L・ジャクソン。アカデミー賞にもノミネートされたことがある彼だが、近年は印象に残る役は特に演じていない。しかし今回のエイブル・ターナーは久しぶりに彼の演技力が問われる役。エイブルはただ白人が嫌いな黒人ではなく、人として狂ったマインドを持つ人物として描かれており、彼の不敵な笑顔や、笑い声にはイライラさせられてしまう。

　共演では『ハード・キャンディ』や『リトル・チルドレン』で好演したパトリック・ウィルソンがクリス・マットソンに扮しており、エイブルに踏んだり蹴ったりで観る者の同情心を買う。クリスの妻リサには『レイ』『ファンタスティック・フォー』のケリー・ワシントンが扮している。

　本作は主演が彼なので、やはりサミュエル・L・ジャクソンショーになっている。彼が出演すると皮肉にもスリラーの物語がコメディに思えてしまう。それでもこの物語の中のキャラクター、特にエイブルとクリスの描き方がうまいせいか妥当な満足感を味わう事が出来る。エイブルには妻がおらず、男で1つで年頃の娘と息子を育てており、彼の私生活の歪みが仕事にも影響を及ぼしている。一方クリスは子供を持つのはまだ早いと思っており、早く子供が欲しいリサとその事で口論になったり、リサに隠れて煙草を吸ったりしている。エイブルがただ単に若い夫婦に嫌がらせをする映画ではなく、その若い夫婦にも彼らなりの問題を抱えている姿が物語をより面白くしている。

　エイブルに生活を脅かされる夫婦は自分たちを守るために様々な対策をするが、エイブルの攻撃はどんどんエスカレートしていく。そしてラストにはイライラが最高潮に達するシーンが登場する。この映画を観て思うのは、もしあなたが隣人にしつこく苦しめられていて、そこで折角手に入れた素敵な家から引越しをしても、その隣人に反撃してもどちらにしても、結果的に苦い思いをするのは免れないだろう、という事だ。『レイクビュー・テラス危険な隣人』は良い映画ではないが、退屈はしないはずだ。