Killer of Sheep - 岡本太陽

チャールズ・バーネットの名作(95点)

 『Killer of Sheep』。これはチャールズ・バーネットが1970年代初期に製作し、77年に公開、その後上映を重ねながら、1981年にベルリン国際映画祭で賞を得た作品だ。当時は16mmで公開されたが、製作から30年経った2007年今年35mmプリントとして甦り、世界的にリリースされるに至った。

 わたしはこの映画のことを、他の映画の予告編で観るまで全く知らなかった。なぜこの映画があまり人に知られるようにならなかったというと、音楽の権利問題や、ビデオ化されなかったことが原因のようだ。だからどこかしらの映画祭などの特別上映会などでしか公にはお披露目されなかったらしい。

 映画は70年代のロサンゼルズのスラム街が舞台で、貧困に失望する妻子ある黒人の男が主人公である。この映画は解決を呈さない。アフリカンアメリカンというアイデンティティにより、機会が均等でなかった時代にスラム街に生きる人々の生活を淡々と描くだけだ。リビングルームでの会話、些細な喧嘩、子供達の遊び場、働く風景、近所の人達の声、そういった日常を描く事で穏やかなリアリティをわたしたちに示す。

 このような映像を作る事ができたのはやはりバーネット氏が優れた洞察力を持っていたからに他ならない。完全に写実主義で、貧困の中での生活の窮屈さやその中での生命のあり方を詩的に表現していているので、2007年現在に30年前のこの作品を観ても、わたしたちはどこかこの映画に新しいオリジナリティーを感じてしまうのだろう。

 映画の中で使われている音楽が非常に良かった。主人公の男とその妻がバラードをかけながらゆっくりと踊るシーンがある。そのシーンが一番印象に残った。心地よいバラードに乗せてぎこちなく踊る二人の姿が痛々しくてやるせなくて切なかった。しかしこのシーンは映画史に残る美しい場面の一つになるかもしれない。

 わたしたちの生きる世界は不条理な事が多い。貧困の中で窮屈な毎日を過ごしていると生活の中に喜びを見出せないかもしれない。でもその中で人の温もりに触れながらまた窮屈な毎日を繰り返す。この映画はそういった70年代当時の飾らない日常を描いているに過ぎないが、観るわたしたちは何かを感じ取れずにはいられなくなる。87分間の上映後、わたしは非常に穏やかな気持ちで映画館を後にした。

岡本太陽

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