JUNO/ジュノ - 佐々木貴之

◆ほのかな温かさで描かれていて実に嬉しい気持ちにさせてくれる(85点)

 16歳の女子高生ジュノ(エレン・ペイジ)は、バンド仲間のポーリー(マイケル・セラ)と興味本位だけでやってしまった性行為によって予期せぬ妊娠をしてしまった。だが、彼女は中絶手段を諦め、生まれた子供をマーク(ジェイソン・ベイトマン)とヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)夫婦の養子にすることを決意する。

 本作は、本年度のアカデミー賞主要四部門にノミネートされ、見事に最優秀脚本賞を獲得した。また、アメリカではわずか7館だけの劇場公開が口コミ等で人気が広まったことによって2448館まで拡大公開され、興行収入第二位まで上り詰め、わずか二ヶ月で大ヒット作へと急成長した。脚本のディアブロ・コディは新人であり、かつてはストリッパーやテレクラのオペレーターといったピンク産業で活躍していた。その一方でブロガーとして日々ブログを更新していた。このブログを大いに気に入ったのが製作のメイソン・ノヴィックであり、ここから本作の誕生の第一歩となった。監督のジェイソン・ライトマンにとっては監督第二弾作品となる。ジュノ役のエレン・ペイジと言えば、『ハードキャンディ』(05)でテレクラで知り合った男をトンデモナイ罠に陥れた主人公を演じ、世の男性観客たちを震え上がらせてくれた女優として知られている。そんな彼女がクールであるがパンクロックにB級映画好きといった風変わりな一面を魅せ、大きな腹を抱えて少し悩んでしまったりする女子高生を違和感を感じさせずに見事に演じ切った。エレンは、本作をきっかけに大ブレイクしたのである。他に脇を固めるのは、ジュノの腹の子の父でもあるポーリー役のマイケル・セラをはじめ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、J・K・シモンズ、アリソン・ジャネイといった面々で各々のキャラクターをしっかりと確立させて描いているのでとても印象深い。中でもジュノの義母役のアリソンの皮肉めいたセリフ回しはかなり面白くて笑わせてくれる。主役のエレンをも喰ってしまうほどの勢いを軽く感じさせる注目せずにはいられないキャラクターである。

 未成年者の予期せぬ妊娠というテーマは、同世代の方々にとっては共感を抱けるが、成年者にとっても興味深いことだろう。このテーマから想像できるのは、苦悩や悲哀といったマイナスなイメージが多いとは思えるが、そういった内容は殆どと言っても良いほど無く、逆にユーモアを取り入れたコメディーテイストで面白く、明るく、そしてほのかな温かさで描かれていて実に嬉しい気持ちにさせてくれる。これが本作の最大の良いポイントである。

 これまでに一本しか撮っていない監督、新人脚本家、少しだけ有名な若手女優といったキャリアの少ないトリオが大ヒットへと導いた本作は、コメディー、青春モノ、恋愛モノ、人間ドラマと様々な味付けが楽しめて本当に面白い。キャリアが少ないからと言ってナメてはいけないと言うことを三人は証明したのだ。

佐々木貴之

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