J・エドガー - 樺沢 紫苑

80歳を超えて、なお自己最高を更新するような野心的な作品を
作り続けるイーストウッド監督は、本当に凄いと思う。(点数 90点)


(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 『J・エドガー』が素晴らしかった。
 ジョン・エドガー・フーバー、FBI長官という一人の人間を
描き出すだけでなく、アメリカの近代史を犯罪という裏側から
あぶりだしたクロニクル(年代記)になっているスケール感がすごい。

 エドガーは、歴代大統領や有名人に対する盗聴、恐喝をしていたなど、悪役イメージだが、そのエドガーにここまで共感するとは、
完全に想定外。彼の「孤独」と「老い」の描写が深い。

 見る前は、「なぜ、今、フーバーか?」という疑問もあったが、
「老い」というテーマは、イーストウッド監督『ミリオンダラー・ベイビー』
『グラン・トリノ』に完全に通じている。

 圧倒的な権力者として君臨しながらも、彼が抱える「孤独」。
 彼には母がいて、忠実な部下と秘書がいた。

 にもかかわらず、彼は不全感と「孤独」にさいなまれ、
いらだちを強めていく。

 ある種の人間不信であり、そこには深い病理があるのだが、
映画のラストに向かってもその病理が明らかにされていく過程が、
精神医学的にゾクゾクした。
 そう、どこか『アビエイター』に通じるものがあるのだ。

 でもこの「孤独」には、妙に共感してしまった。
 親しい人、好きな人と一緒にいるのに、本当に自分が理解されているのか? 
 自分は愛されているのか? 安心ではなく、むしろ不安に陥る心理。
 あにたも経験したことは、ないだろうか?

 80歳を超えて、なお自己最高を更新するような野心的な作品を
作り続けるイーストウッド監督は、本当に凄いと思う。
 イーストウッド監督の創作力と演出力に「老い」は全く感じられない。

 ただ、映画が終わった直後、近くの若い女性が「全くわからなかった」と
つぶやいていたが、アメリカの歴史を多少は知っていないと
楽しめないかもしれない。

 「フーバーFBI長官って誰?」という人には、あまりおもしろくないかも・・・。

樺沢 紫苑

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