映画監督 山本政志氏 インタビュー
「クオリティは絶対的な作品を作りたい。」
2007年9月9日更新
「闇のカーニバル」(‘83)が、ベルリン・カンヌ映画祭で連続上映され、ジム・ジャームッシュらニューヨークのインディペンデント監督から絶大な支持を集める。「ロビンソンの庭」(‘87)?ベルリン映画祭Zitty賞/ロカルノ映画祭審査員特別賞/日本映画監督協会新人賞?では、ジム・ジャームッシュ監督の撮影監督トム・ディッチロを起用、香港との合作「てなもんやコネクション」(‘90)では専用上映館を建設、「ジャンクフード」(‘97)を全米10都市で自主公開、「リムジンドライブ」(‘01)では単身渡米し、全アメリカスタッフによるニューヨーク・ロケを敢行するなど、国境を越えた意欲的な活動と爆発的なパワーで、常に新しい挑戦を続けている。
―作品制作の上でもっともこだわった所などは?
やっぱりエンターテインメントとしてちゃんと成立する様に全体の構成とテンポ、それとリアリティに一番こだわった。小さな枠の中、予算も低い中で、プロとしてやってる以上、クオリティは絶対的な作品を作りたい。「予算がないから」とよく言うけど、そういうのはプロとして恥だと思うね。最初に決めたんだったら、やはりそれなりの事をやって見せなきゃいけないと思う。俺なんかはそれなりの事以上のことを見せたいというプライドがあるから、今回は特にテンポ、芝居、リアリティにこだわって撮った。それと、そのこと以上に、見た人が面白がれることを常に考えていたかな。あとはDVDに注目してもらいたいね。実は撮影中に、DVDにしたときにはDVDでしかできないことをやろうと、あるアイディアが閃いた。『聴かれた女』は“盗聴する男”の視点で話が進むんだけど、DVDには、同じ時間・同じ物語を“盗聴される女”の側から描いた『聴かれた女の見られた夜』も収録していて、観てもらえれば分かるけど、“盗聴する側”と“される側”の2つの視点を自由に切り替えて見られるシーンスイッチという機能をつけた。この試みで、よりリアリティーのある作品に仕上がったと思う。俺はDVD=映画とは思ってないし、DVDでしかできないことってけっこうあるから。それと今回は技術を見せびらかす為にやった(笑)
―盗聴というテーマはどこからきたのですか?
実際に盗聴をしている人がいて(笑)、前半はその人の話を聞ききながらディテールを埋めてく作業をした。だからそいつの話を忠実に再現している。そこからの展開は自分で創りあげていった。一般的に盗聴というと陰湿なイメージがある。だからそれをポップにやっていこうと、キャラクターもバカっぽい奴にしようと決めた。なんだかんだ言っても内向的な話でしょ、盗聴っていうものが。それは、今の時代的な背景もあると思うし、情報過多な所もある。だから、そこから一歩踏み出すのか出さないのか分からないけど、ちょっとその世界から外に出てもらおうかなっと思った。
―主演の蒼井そらさんを抜擢された理由は?
今回は単純にプロデューサーの方から話をもらった。知名度も人気もある子だったし、素質もすごくあって、この作品にぴったりはまった。彼女でなければ成立しなかったシーンもたくさんあったと思う。どんどん1ショットを長くしていったし。途中から、ちょっと練習すれば出来る子だというのが分かって、要求もあげたけど、ちゃんとそれもこなしてたね。実は撮影前のリハの初日に、彼女から台本を取り上げたんだけど。「出来るからもういいよ」って。どれだけ出来るか実験してみたくて。まるっきり予備知識がないところでやらせようとしたから、そらは戸惑ってマネージャーと俺の顔を見ていたけど、ほったらかしてみた。でも出来たんだよね。それをやるとやらないとでは、セリフに対するリアリティが全然違う。分かりやすく言えば、台本の一文を暗記してしゃべるのか、探りながらしゃべるのかは全く違うから。役者っていうのは監督の悪さもあるとは思うけど、形を気にする人が多いんだよね。例えば芝居にしても、体をちょっとひねって少し力強くとか。そういうんじゃないと思うんだよね。それ以前の問題。形というのはそこまで重要じゃない。俺が目指している方向っていうのはまるっきり違って、もっと生々しいものがいつも見たいと思ってる。下手で生々しいのと、器用で形作られたものだったら、圧倒的に前者だね。
























