──これまで「虹の女神」や「イノセントワールド」などの作品が映画化されてきましたが、ご自分の作品が映画化されたときの心境は?
「イノセントワールド」に関しては監督の下山さんならきっと良い作品を作ってくれるだろうと信じていたので、完全にお任せしていました。原作ではかなりドロドロしてるシーンがあるんですが、映画ではとても綺麗で純粋なものになっていました。空気感がとても素敵で逆にこういう表現もあるんだって驚かされました。
「虹の女神」の時はシナリオも自分がかなり関与しましたし、どんな空気で出来ていくかということにとても関心があったので、クリエイティブプロデューサーの岩井さんと何度も話し合いもしました。熊澤さんの手腕も岩井さんの才能もすごいな思います。岩井ワールドのすごさを分かっているだけに、最後の方は予想がつかないところが合ったんですけど、みごとに色んな人の世界観がかみ合ってあの世界が出来たんだなと感動しましたね。きっとそれが一つでもかけてたら全く違うものになってたんだと思う。
一貫して思うのは映画表現と活字表現は違うんだなって。同じだと逆につまらないですしね。よく小説を映画化するとがっかりしたなんて言われますけど、それは確かにその通りであって。小説は深層にどんどん潜っていってもいいんですよ。でも映画でそれをやってしまうと自己満足して全く動かないつまらない映画になってしまいます。エピソードを転がさなきゃいけないんですね。そして誰かと出会ったり何かをすることによって深層の部分を表現していくんです。
中身は同じであっても全く別の翻訳形態に分化する。そういうことで言ったら、自画自賛ですが虹の女神は小説と映画で上手く分化出来たと思いますね。映画を観ても小説を見てもどちらを見ても楽しめるはずです。映画「虹の女神」は本当に、映像でしか表現し得ない陰影やニュアンスを総結集させた、素晴らしい作品だと思います。
──映画はよく観ますか? また桜井さんが一番好きな映画は何ですか?
映画はよく観ます。好きな映画を一つあげるとすれば「ガタカ」ですね。:遺伝子が全てを決定する未来社会を舞台にしたお話なんですけど、とても感動する映画なんです。何がいいかと言うと、生まれつきの能力とかその時の環境で人生が決定される世界で、主人公のイーサンホークが劣性遺伝に生まれついた人生から馬鹿みたいに這い上がろうとするんですよね。それがものすごく共感するところがあって。
何でもがむしゃらにやらないと駄目なんですよね。本来の能力では追いつかない所までやろうとあがく、そういう必死さに共感したんです。これは本当に隠れた名作ですね。どんな状況になっても諦めないことの大切さを教えてくれる、そして勇気を与えてくれる映画なんです。
──今後の目標や展望をお聞かせください。
自分の原作を映像化することかな。とりあえず大規模じゃなく単館でいいので、映画好きなお客さんが見に来てくれる映画にしたい。興行的に稼げなくても何とかペイして、口コミで面白いよって広がるルートがその映画で作れたらいいな思います。
結果、大きな利益は得られないかもしれないですけど、映画好きが見に来たくなる様な映画の上映の仕方が夢なので。今はやりたくて必至にあがいています(笑)
実は私は小説を書くとそれが脳内映画として見えてくるんですね。ここはこの辺りに光があたっていて、こういう風にカメラが見ていてこう動いてといった感じで。だから一つ小説を書くとシナリオまで書きたくなるんですよ。シナリオと小説では全く違うものに翻訳されるんですけど、どっちが上ってことではなく違う創造過程のものだと思います。それが平行して私の中にあるんじゃないかな。
監督さんが小説も書いてシナリオも書くのはヨーロッパでは珍しくはないですし。本業が監督じゃなくても自分の気持ちさえ強く持っていれば絶対に出来ると思う。作品に愛がある人が一番深く関わるシステムで作らないと、きっとその映画に愛が薄くなってしまってかわいそう。それくらい愛があれば、きっと観る人だってその必然性を感じると思います。だからこそ、私は愛をたくさん感じられる映画を作りたいですね。

























