IN THE LOOP - 岡本太陽

◆汚いビジネスの裏では可笑しな事が起こっている(80点)

 英コメディ映画『IN THE LOOP』は戦争を扱った政治的風刺映画だが、「この映画は過去の歴史とはなんら関係ない」と監督のアーマンド・イヌアッチは言う。物語の中ではアメリカ大統領とイギリス総理大臣が協力して中東のとある国との戦争を考えている。これはいくらフィクションとは言えど、やはりあの戦争を思い起こさせる。しかしながら、戦争案には両政府の中にも反対派がおり、この映画は彼らの奮闘や混乱を描く。

 戦争に反対している英国外務大臣のサイモン・フォスター(トム・ホランダー)は英国放送協会(BBC)のラジオのインタビューに対し、戦争は予測出来ないと答える。それは戦争賛成との発言とも取れ、内部に混乱を招く。さらには「もちろん平和は望ましい事だが、時には争いが行われている山に登る事も必要」と発言し、自分を追い込む。しかし、彼の発言により、米ワシントンでは好意的に受け止められ、戦争委員会に参加するのだった。

 『博士の異常な愛情』や『サンキュー・スモーキング』等の実存主義的政治的コメディ映画を彷彿とさせる本作はイギリスのヒットテレビ番組「ザ・シック・オブ・イット」を基に脚色された作品で、アメリカでもリメイクされ人気を博している「ザ・オフィス」同様のモキュメンタリー作品となっている。イギリス独特のウィットに富んだ会話の羅列が演劇風な脚本でもあるが、画面の中の第三者が物語の登場人物達の行動を追っている様な錯覚に陥ってしまう手法と少々乱暴で鋭い笑いがわたしたち刺激する。

 乱暴と言えば、ピーター・キャパルディ扮する英国政府報道・戦略局長マルコム・タッカー。彼のモデルとなったのはトニー・ブレア政権の元報道・戦略局長アラスター・キャンベルで、タッカーの口から発せられるのはここでは書けない程の暴言ばかり。本作はアドリブも非常に多く取り入れられているそうで、あのひねくれた強烈な発言の数々がどれだけアドリブであるのか気になる所。彼には常に顔を強ばらせて怒っている印象を受けると同時に、ストーリーの中で波を作っていると言っても過言ではない程パワフルな存在だ。また、このタッカー同様に非常にうまくキャラクター達が作り込まれているのには感心に値する。

 アメリカ側もイギリス側も本作に出て来る官僚達は白人ばかり。涼しい顔をしながら彼らは心の内では他を陥れようと企てている。裏切りは当たり前。人が人を利用して生き残っていく世界では道徳心のある者は負けるのだ。本作はトニー・ブレア英国前首相のイラク戦争との関わりに触発されてアイデアが生まれ、おそらく 2003年にはこの様な可笑しなドタバタ劇が政府内で繰り広げられたのではないかと推測が出来る。

 物語の中で、サイモンの一言が周りを大混乱に招いてしまう様に、一言の失言が命取りになってしまう、というのは日本でも馴染み深い事。世間を代表している人々の発言は影響力があり、特に政治家達のそれには人々は敏感だ。また、普段の生活の中でも、「あの一言さえ言わなければ」と苦い思いをした経験がある人も多いだろう。サイモンが引き起こす混乱を観察していると言葉というものの重み、そして大切さを改めて感じさせられてしまう。

 本作では「戦争」という暗い題材を扱っている。題材は非常に真面目だが、戦争の裏は奇なる事が行われていると言わんばかりに、継続的に吹き出してしまう程可笑しくてしょうがないというのが本作の魅力だ。それでもやはり人と人が互いに卑しくなってしまう戦争とは、やはり汚いビジネスであるに他ならない。

岡本太陽

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