スクリーンで発散する存在感、それは敵役を演じた中村獅童には備わっているが、窪塚洋介には決定的に欠けている。顔が小い上に声も細く活舌も悪いという、およそ刀を振り回して暴れるタイプには見えず、完全なミスキャストだ。(40点)
スクリーンに登場すると周りのものすべてを圧倒する存在感、それは敵役を演じた中村獅童や竹内力には備わっているのだが、窪塚洋介には決定的に欠けている。顔が小い上に声も細く活舌も悪いという、およそ刀を振り回して暴れるタイプには見えず、完全なミスキャスト。さらに大沢たかお扮する刀を抜けない侍も単にアホ面をさらしているだけにしか見えず、居合刀を舞うように操り屈強な男を次々とぶった斬ってひとり気を吐いているヒロインの足を引っ張っている。
離れ瞽女の市は因縁をつけてきたチンピラ3人を秒殺したことから十馬という侍と知り合う。2人は宿場町に着くが、勘違いから十馬は町の用心棒に雇われ、市は盲目の居合の達人を探して万鬼という悪党のもとに出向く。
市の心を支配する虚無感はいったいどこから来るのだろう。瞽女仲間から追放され一人生きていかなければならないつらさを忘れるためなのか、それとも自分に居合を教えた父と思われる人物を探す旅であるにもかかわらず、頭の中ではもう死んでいるということを認識しているからなのだろうか。頑なに心を閉ざす一方で、外道には容赦なく太刀を浴びせる。彼女の過去やトラウマは描かれる割には現在は何を考えているのかが全く分からず、ただ流れに身を任せているようにしか見えない。そもそも父親と会ってどうするつもりだったのか。また万鬼も彼女の父を知っているようではあったが、父の仇ではないはず。ならば市が万鬼と戦う理由もない。
やがて町を手中に収めんと万鬼が子分を引き連れて攻めてくる。迎え撃つ町の親分と十馬。最後には十馬と万鬼の一騎打ちになるが、十馬は死に万鬼も倒れる。市は万鬼にとどめを刺すが、それは初めて愛を感じた十馬を殺したことに対する復讐の意味だったのか。結局、あらゆるエピソードが行き当たりばったりでつながりに乏しく、綾瀬はるかの華麗なる殺陣以外に見るべきところは乏しい作品だった。
(福本次郎)