◆婚約したが男友達がいない！ベストマンを求め急いで男とデート！（50点）
男は男同士で遊んでいる時が楽しい、男性ならば誰でも感じた事があるだろう。その事に対し理解を示してくれる女性もいるが、それはやはり男性にしか理解出来ないことなのかもしれない。コメディ映画『40男のバージンロード』は今まで男の友人と遊ぶという事を知らないまま生きてきた30代の男の物語で、男達を主人公にした痛快なコメディを作るジャド・アパトウ映画を彷彿とさせるユーモアを散りばめたバディムービーだ。
不動産会社に勤務するやり手のエージェント・ピーター（ポール・ラッド）は8ヶ月の交際を経て恋人のズーイ（ラシダ・ジョーンズ）にプロポーズをする。何もかもうまくいくと思っていたが、ピーターは今まで常にガールフレンドとばかり時間を過ごしていたため自分に男友達がいない事に気付く。そこで、結婚付添人である「ベストマン」を探すため、いくつかの男友達とのデートを試すが（物語の中ではマンデートと呼んでいる）、なかなか仲良くなれそうな人材は見つからない。しかし、仕事でルー・フェリグノ（テレビ版超人ハルクで有名）の持つ屋敷を売るために家を見せている時に、シドニー（ジェイソン・シーゲル）という男に出会う。そしてこの出会いがピーターに大きな変化をもたらす。
本作の監督は『ポリー my love』で脚本監督を務めたジョン・ハンバーグ。彼はジャド・アパトウが制作したテレビシリーズ「Undeclared」を数話監督し、アパトウ氏との親交も深い。そしてそのジャド・アパトウの映画に欠かせないのが本作の主人公を演じるポール・ラッド。彼が演じるピーターという男はこの物語のなかで、男ならおそらく誰でも十代の時に経験するであろう事を30代で初めて経験するのだが、ピーターに男同士で遊ぶという楽しみを提供するのが『寝取られ男のラブ♂バカンス』でブレイクしたジェイソン・シーゲル扮するシドニーという男。ここ最近のコメディ映画を盛り上げている2人の共演なだけにキャスティングだけでもついこの映画に興味を抱いてしまう。
シドニーは肩肘張らずいつもリラックスしてオープン。そんな今までに出会った事のない種類の男にピーターは夢中になってしまう。婚約者のズーイはシドニーとの時間ばかりを割くピーターに半ば呆れがちだが、彼を理解しようとする。2人だけで過ごす時間は減ったが、ピーターのズーイに対する気持ちは変わらない。ただ彼は少年時代を取り戻したみたいにシドニーとつるむのが楽しいだけなのだ。シドニーと一緒に飲んだり、バンドRUSHのコンサートに行ったり、ピーターの日常はよりエキサイティングで充実していく。ただピーターとズーイは結婚を間近に控えているため、それが後に彼らの間で問題になってくる。
物語の中で、非常にユニークな脇役のキャラクターが出て来るのもこの映画の魅力の1つで、ズーイの親友ヘイリーに扮するサラ・バーンズとデニースに扮するジェイミー・プレスリーは主人公の婚約者以上に個性が強いのが印象深い。またデニースにはジョン・ファブロー扮する夫がいるのだが、彼ら夫婦間のやりとりが笑いを誘う。それからピーターの家族にJ・K・シモンズ（父）、ジェーン・カーティス（母）、アンディ・サムバーグ（弟）等が扮しているのも見逃せない。
最近のコメディ映画は出ている俳優達がいつも同じで、雰囲気もだいたい似ているため、全部同じ様な映画に思えてしまう。キャスティングは非常に魅力的だが、残念ながら本作もその他多数の最近のコメディ映画の1つに数えられる。まず、友人の中にベストマン候補がいないという理由で、マンデートをして男友達をわざわざ作る、というアイデアに現実味がない。家族に頼んでも問題ないはず。それにそのアイデアを結末までうまく料理出来ずにただ物語は普通に丸く収まっており、スパークしない。このキャストで丸く収めるのはもったいない限りだ。それでもポール・ラッドとジェイソン・シーゲルが2人でアドリブで遊んでいるいくつかあるシーンは何とも微笑ましく、この映画の一番の見どころは実はそれかもしれない。
（岡本太陽）
