◆これは今年の『SATC』だ!(40点)
デートの際、女性は男性にそっけない態度を取られるとこう考える、「彼のあの態度には何かのメッセージが込められてるのかも」。そのメッセージとはもちろん自分に好意があるという事。しかしながら、デートの後待てど待てど電話は掛かって来ない。「どうして?」。その答えは簡単だ。男はそんな複雑な生き物じゃない、彼らはただ単に興味がないだけだ。
『そんな彼なら捨てちゃえば?』はそんなメッセージが込められた女性のための映画だ。本作は『セックス・アンド・ザ・シティ』の制作者として知られるグレッグ・ベーレントとリズ・タシーロの同名ハウトゥー本『恋愛修行 最高のパートナーと結婚するための恋愛心得』の映画化作品で、ベーレントとタシーロは『セックス・アンド・ザ・シティ』の「えくぼもあばた」というミランダがキャリーのその時の恋人バーガーに意見を求めるエピソードにインスパイアされて書き、本をベストセラーへと導いた。
映画は『旅するジーンズと16歳の夏』のケン・クワピスが監督を務め、本作に出演しているドリュー・バリモアが製作総指揮に当たっている。また、本作はオールスター共演で、9人の登場人物が互いに関係し合い恋愛に奮闘する。その9人の中でも話の軸になるのがジニファー・グッドウィン扮するジジ。彼女は小さい頃に母親に「男の子は好きな子にいたずらする」、と教え込まされており、男性とデートをする度に彼らの態度を誤解し混乱してしまう。物語の中ではまずケヴィン・コノリー扮するコナーとデートをするが、やはり得意の勘違いをやらかしてしまう。観ている側は彼女の激しい暴走っぷりと品のなさに苛立ちを覚えてしまうかもしれない。
また彼女に助言するのがジェニファー・コネリー扮する母親と同じ様な考えを持った姉ジャニン(何故ミス・コネリーがロマンティック・コメディに!?)。イケメン弁護士のベン(ブラッドリー・クーパー)と結婚し幸せそうに見えるジャニンは家のリフォームにばかり気を取られており、夫に何が起こっているのか気が付かない。その頃ベンはセクシーヨガ講師アンナ(スカーレット・ヨハンソン)と出会い良い雰囲気になっており、ジャニンとベンの結婚には決定的な亀裂が。アンナは典型的な悪女で(やっぱりスカーレット・ヨハンソン!)、自分の気持ちが満たされない時は都合の良い男コナーと会い、自分を慰める。
正直、本作は映画版『セックス・アンド・ザ・シティ』同様、テレビの30分番組で丁度良い内容の作品で、129分の物語がひたすら長く感じられてしまう。そのどうしようもない物語の中で一番安心して観る事が出来るのはベスとニール(ジェニファー・アニストン&ベン・アフレック)のエピソード。彼らは7年付き合っており、ベスは結婚願望が強く、ニールは結婚が怖い。ジジがコナーのルームメイトのアレックス(ジャスティン・ロング)と出会い再び寸劇を繰り広げている間に、どこかで観た事がある様な展開だがベスとニールの物語にだけは好感が持てるだろう。
最近の女性向けの映画は実に自虐的な作品が多く、『そんな彼なら捨てちゃえば?』もその部類に入る。間違いを見つめ、自分の愚かさに気付き、そこから学ぼうというもので、典型的な場合、ゲイの男達が恋愛の仕方を伝授する。もうそういった映画は見飽きた様な気もするし、恋愛は人それぞれいろんな形があっても良いと思うのだが…。これはジェニファー・コネリーの新境地を見る映画としては楽しめる作品である。
(岡本太陽)