◆強引な力技で引っ張っていく演出はまさしくエンタテインメント。物語の齟齬を熱意とチームワークで乗り切っていく。主人公のセリフを通して法律用語を平易な言葉に置き換え、変わろうとしている法廷を身近に感じさせてくれる。(50点)
キャストを豪華にするとそれだけエピソードが拡散し無駄が多くなる。ただ顔見世のために出てきたような俳優も多く、登場する意味のないキャラクターが散見する。中井貴一や綾瀬はるかなど、何のために出てきたのだろう。それでも強引な力技で最後まで引っ張っていく演出はまさしくエンタテインメント。物語には限りなく齟齬が出てくるのだが、そこは熱意とチームワークで乗り切っていく。主人公のセリフを通して、法律用語を平易な言葉で置き換え、変わろうとしている法廷を身近に感じさせてくれる。
傷害致死事件を引き継いだ久利生検事は、被告が法廷で自白を覆して無罪を主張したことから、アリバイ崩しの証拠集めに奔走する。その被告の影に大物大臣の収賄疑惑が絡み、特捜部が横槍を入れてくる。
テレビドラマを見ていなくても人間関係や設定が整理されていて、混乱することなく見ていられる。事件の裏に隠された陰謀、検察同士の縄張り争い、そして地道な捜査。それら検察官の日常を再現することで、彼らが決して法曹エリートではなく普通の生活感覚を持った人間であることを描いている。しかし、あまりにもカジュアルになりすぎかえってリアリティを失っているのが欠点。久利生を描くことで検察官という職業のステレオタイプを変えようとするのは理解できるが、せめて法廷内ではもう少し節度ある服装をすべきだろう。
また、事件の鍵となる車を追って久利生と事務官・雨宮はプサンまで出向くが、まるでイ・ビョンホンの出番待ちをしているようなダラダラした展開。あんな派手な車を探すのに市場のおばちゃんに聞き込みするのはまったく無駄。まともな捜査感覚を持った検事なら地元の暴走族のような連中に当たるだろう。その上、裁判中に新証拠をつかんだ検察仲間がどやどやと法廷になだれ込む。その証拠写真少し無理があり、火事の野次馬は燃えている家屋を撮っても、同じ野次馬の顔は撮らないはず。まあ、ディテールにはツッコミどころ満載だが、久利生と雨宮の恋が主題と思えば、こういう展開も許されるのだろう。
(福本次郎)