『サウスパーク』『チーム・アメリカ』のクリエーターが作る有名悲劇の続編!?(65点)
ウィリアム・シェイクスピアの代表作に「ハムレット」がある。これは映画化も幾度となくされてきた有名な悲劇だ。夏の大作映画の公開も一通り終了した今日、ユニークなタイトルの映画が公開を迎える。それは『HAMLET 2』。「ハムレット」で既に登場人物は皆死んだのでは?しかし、これはそのシャイクスピア作品の続編ではない。本作は全くオリジナルの教師が主人公のスクール・ムービーだ。
アリゾナ州タクソンに住む主人公ダナは演劇界での成功を狙いながら仕方なく高校のカリキュラムに特に必要のない演劇を教えている高校教師。彼のクラスの生徒はたった2人だったが、新学期が始まると彼の生徒の数は何倍にも増えてしまう。しかし、予算削減のためダナのクラスは閉鎖される事に。そこで彼が演劇のクラスを閉鎖から救うために思い付いたのは「ハムレット」の続編「ハムレット2」だった…。
アンドリュー・フレミング監督作品『HAMLET 2』は非常に皮肉的な映画だ。それもそのはず本作の脚本をアンドリュー・フレミングと共にパム・ブラディが執筆しているのだ。パム・ブラディは『サウスパーク』や『チーム・アメリカ』の脚本家として知られており、本作もまた特に宗教や同性愛ネタを散りばめた作品となっている。
ダナはハリウッド映画の演劇バージョンばかりを作るオリジナリティのない劇作家。そのダナを演じるのは、胡散臭い感じが素敵なイギリスのコメディアン、スティーヴ・クーガン。ファクトリー・レコードのオーナーであるトニー・ウィルソンに扮した『24アワー・パーティ・ピープル』が彼の映画出演のキャリアの中で1番印象的で、最近では『ホット・ファズ?俺たちスーパーポリスメン!?』や『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』に出演している。
その他の出演者ではキャサリン・キーナー、エイミー・ポーラー、デヴィッド・アークエット、メロニー・ディアス等がいるが、その中で異彩を放つのはエリザベス・シューに扮するエリザベス・シュー。本作では、彼女は『リービング・ラスベガス』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたが、演技する事に疲れ現在は看護士として働いているという設定だ。ダナは大ファンのエリザベス・シューに偶然出会い、2人の間に刺激し合える妙な関係性が生まれる。1度は名声を得たが、消えかけていた女優の再生劇をストーリーの中でも現実でも表現している。
「ハムレット2」とはダナが適当に思いついた演劇。そんな突拍子もないアイデアにはじめは妻も生徒達も冗談だと思ってしまう。しかしダナは劇作家生命を賭けて「ハムレット2」を制作に挑む。彼の作るその舞台は「Rock Me, Sexy Jesus!」を始めとする歌やダンス、そしてタイムマシーンやキリストが登場したりと1クセも2クセもあるストーリー展開。この映画の中でもそのダナのオリジナル作品の仕上がりに注目が集まるのだが、本作はやはりスクール・ムービー。ダナ自身『いまを生きる』や『陽のあたる教室』にインスパイアされており、新学期が始まって増えたのはメキシコ系アメリカ人の騒がしい生徒達で、ダナはミシェル・ファイファー主演の『デンジャラス・マインド』の様なクラスを目指す。生徒達はダナの話に耳を傾けないが、彼は映画の様なその状況に酔いしれている様にも見受けられるのが可笑しい。
アンドリュー・フレミングとパム・ブラディが作り上げた物語はスクール・ムービーだが、今までのその手の映画とは全く異質の作品だ。なぜなら、際どい内容もそうだが、何より登場人物達は本物の人間だが、彼らが『サウスパーク』のキャラクター達に見えてしまうからだろう。それでもクライマックスの「ハムレット2」の完成披露の際には可笑しいのにちょっぴり感動させられてしまう。馬鹿馬鹿しいがなかなか侮れない映画だ。
(岡本太陽)