ハチの気持ちが手に取るようにわかる(70点)
日本人なら誰もが知っている忠犬ハチ公の物語を、米国郊外に舞台を移してリメイク。ベタな演出は極力控えながらもハートウォーミングな物語になった。駅で大学教授のパーカーに保護された迷い犬の子犬はハチと名付けられ元気に成長する。ハチは毎日5時になると駅にパーカーを迎えに行くのが日課になったが、ある日教授が急死してしまう。
教授との絆、死別してからも待ち続けるけなげな姿はオリジナルと共通するが、個性的なのは、人間に媚びない秋田犬の特質を盛り込んだこと。またハチが見る世界をモノクロにしたのが効果的だ。低い位置の犬目線のカメラワークで人の仕草や自然が描写されるのは、擬人化していないのにハチの気持ちが手に取るようにわかるクレバーな表現法で、上手さを感じさせる。ホラーやアニメばかりが注目される日本映画。派手なアクションや冒険がなくても心温まる愛と絆の物語は人の心を打つ。大の犬好きというギアのあたたかい演技も大きな魅力になっていて、そのせいか、教授とハチの幸福な姿がいつまでも記憶に残る。
(渡まち子)