もはやストーリーなど二の次(55点)
世界を救っているのか、ブッ壊しているのか、区別がつかない超ド級のアクション映画は、人気ミリタリー・フィギュア・シリーズの実写映画化。近未来を舞台に、破壊兵器ナノマイトを奪った悪のテロ組織コブラに、国際機密部隊G.I.ジョーが立ち向かう。だが、隊員のリーダーのデュークには、コブラに所属する美女バロネスと浅からぬ因縁が。悪徳武器商人や謎の科学者などが入り乱れ、エジプト、パリ、北極と、世界中で激しい攻防を繰り広げる。
これだけ目立っておいて、G.I.ジョーのどこが“機密部隊”なのかと言いたくなるが、ヘンテコ日本描写など、ツッコミどころは山ほどあって、きりがないので止めておく。長所は、ハイ・スピードで話が進むのに、キャラが抜群に分かりやすいので混乱がないことだ。タフガイで正義感の主人公を中心に、ジェット機操縦の名人、頭脳明晰な美女、寡黙なニンジャといった具合。敵側も負けずに個性的だ。韓流スター、イ・ビョンホンが悪役で米映画進出を果たしているのは目を引く。ヘタな成長物語や中途半端な心理描写をバッサリ切り捨てて、アクションに徹しているのが何より潔い。花の都パリを舞台にした大乱闘や、海中の秘密基地でのバトルは荒唐無稽を絵にかいたよう。登場人物がハイパー・スーツを着用し、数々のガジェットを駆使して超人的に活躍する図を見ていると、もはやストーリーなど二の次に思えてくる。破壊度ばかりが高く、見終わって何も残らないが、このテの映画ではかえってそれが心地よいというものだ。
(渡まち子)