G.I.ジョー - 小梶勝男

◆悪役が魅力的な映画は面白い(74点)

 あらゆるものを破壊し尽す新兵器「ナノマイト」を巡って、悪の組織コブラと、米政府の組織した国際機密部隊G.I.ジョーが、最新科学を駆使して戦う。現代の東京のど真ん中に少林寺風の寺があり、そこで忍者が訓練されているなどというバカバカしい設定に加え、絵に描いたような勧善懲悪のストーリー。笑ってしまうしかないのだが、それでも映画が面白いのは、悪役が魅力的だからだろう。

 コブラの暗殺者、ストームシャドー役のイ・ビョンホンは、どう考えてもおかしな役を、実にカッコよく演じている。ひとつひとつの動作が妙にキマッている。潤んだ瞳に鍛え上げた肉体。韓流スターらしい過度のキメ具合が、うそ臭いキャラクターにはピッタリで、見ていて清々しいほどだ。

 イ・ビョンホンは今年、本作のほかに、「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」、「グッド・バッド・ウィアード」と、タイプの違う3本の映画に出演し、どの作品でも残虐な悪人を演じている。しかも、3作とも上半身の裸を披露していて、それが映画の見せ場にもなっている。昨年、3作についてイ・ビョンホンにインタビューした際、「今までやったことのない悪役を演じるのには抵抗があった」と語っていたが、この3作での悪役はどれも見事にはまっていた。何より、彫刻刀で彫り上げたような裸の上半身が、演技を超えた存在感を示している。韓流セクシー俳優としてのイ・ビョンホンは今が旬で、本作はその旬の姿を堪能出来る贅沢な一本なのかも知れない。

 悪の美人スパイ、バロネスを演じたシエナ・ミラーも魅力的だ。佳作「ファクトリー・ガール」では、ショートブロンドの美女イーディ・セジウィックを演じた彼女だが、今回は黒髪のロング・ヘア。体のラインを強調した黒い戦闘服が、やっぱり過度にキマッている。アクションも見事にこなしていた。

 旬の2人を見るためだけでも、映画館に足を運ぶ価値はあると思う。

 それに比べ、主人公であるG.I.ジョーのチャニング・テイタムやマーロン・ウェイアンズの影が薄いのは仕方のないところか。「ハムナプトラ」シリーズの監督スティーヴン・ソマーズの演出はいつもながらテンポがよく、パリの街でエッフェル塔の破壊をG.I.ジョーのメンバーが阻止しようとするシークエンスの迫力は素晴らしかった。身体能力を高めるスーツを着て、走る自動車の列を跳び越えていく場面など、最高に爽快だ。それがラスト近くになると、様々な戦いがカットバックで描かれ、にぎやかではあるが大味になってしまったのは残念だった。

「ハムナプトラ」シリーズのブレンダン・フレイザーがカメオ出演している。「ハムナプトラ」でミイラを演じたアーノルド・ヴォスルーも出ている(しかも砂漠を歩いている)ので、たぶん、ソマーズ監督のつながりだと思うが、フレイザーは「ジャングル・ジョージ」にも主演しているので、「ジョー」つながりかも知れない。細かく見ればいろんな「お遊び」も発見できる作品だ。

小梶勝男

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