この映画の魅力を知ってもらうにはどこかで予告編を見てもらうのが手っ取り早いのだろうが、残念ながら本編の面白いところをほとんど出してしまっているので、先に見るのはよしたほうがいい。予告編を事前に見るなとは矛盾もいいところだが、映画本体をより楽しむためには仕方がない。
いまニューヨークには、あらゆる事故、事件から市民を守る謎のスーパーヒーロー、いやヒロインがいる。Gガールと呼ばれる彼女(ユマ・サーマン)は、長身にブロンドヘアをなびかせ、音速並の速さでどこかから飛んでくる。そして無敵のパワーですべてを解決してしまうのだ。そんなGガールも普段は地味なニューヨーカー。そして、そうとは知らずに近づいてきたやさしげな男性(ルーク・ウィルソン)と恋をしてしまう。
さて、ここまでなら「スーパーマン」の男女入れ替え版といった趣だが、このあとの展開が凄い。当初はカノジョがGガールと知り大喜びしていたはずの男も、やがてその超人級の性欲と束縛欲に嫌気が差してしまうのだ。そして、やっぱり普通の女性がいいとばかりに身近な同僚といい仲になっていく。
ところがどっこい、立場上ただでさえ相手が見つかりにくいGガール。やっとつかまえたボーイフレンドをそう簡単に手放すわけがない。かくして男は、世界でもっとも恐ろしい元カノから逃げるという、恐怖の修羅場を体験するハメになるわけだ。
基本的にはコメディーだが、バカ映画的な笑いではない。相当風変わりなヒーローものだし、一瞬で裸になって着替えてしまうといったVFXの使い方もユニークだが、決してふざけすぎはしない。あくまで会話のやり取りで笑わせるという、コメディ映画としての背骨部分を重視してある。
スーパーヒーローと夜空を飛びながら空中でエッチするなんていう、夢あふれる素敵な場面もあるが、全体的には思いつきや設定に頼ってウケを狙うというレベルで終わってはいない。アイデアをきちんと煮詰めてあるなと感じられる。本来この手のキワモノは、劇場未公開でビデオ発売のみという形になってもおかしくないが、結果的にそうならなかったのは、この完成度の高さが要因のひとつかと思われる。確かにこの面白さは、映画館でこそ見てほしい。
激情型で凶暴な、ある意味魅力的なスーパーヒロインを演じるユマ・サーマンがとてもいい。怒りまくっていたのに、彼氏が謝りに来ると思わず許してしまう。そんな(単純だけど)かわいいオンナの一面を上手に出している。
彼女のライバルとなる人間界?の女の子を演じるアンナ・ファリスもまたいい。彼女は「最終絶叫計画」から続く一連のシリーズでヒロインを演じたキュートな女優だが、Gガールとは対照的な「物分りのいい女の子」がよく似合う。ユマ・サーマンのアクの強いキャラクターに押されることもなく、堂々たる存在感を示す。
『Gガール 破壊的な彼女』は、笑いとちょっとのお色気と、迫力たっぷりの女アクションが楽しめる(主にMっ気のある)男性向けの一本。ユマ・サーマンの魅力が大爆発、かわいい36歳のアイドル映画だ。
(映画ジャッジ)