◆物語は大河ドラマというほど大げさなものではないが、ひとつひとつの物語が丁寧で、演じる女優たちも力まずにさりげない演技をみせているのが好ましい(60点)
今の日本映画界を代表する若手美人女優がここまで勢揃いしてくれるとは、何とも豪華な企画だ。昭和11年、進歩的な娘・凛(りん)は親同士が勝手に決めた結婚に納得できず、式の当日に花嫁姿のまま家を飛び出してしまう。昭和30年代、凛の3人の娘、薫(かおる)、翠(みどり)、慧(さと)は、それぞれ悩みを抱えながらも、高度経済成長を遂げる日本で懸命に生きていた。そして現代、平成の時代を生きる娘・奏(かな)と佳(けい)は、母である慧からの手紙によって生きる素晴らしさと母の愛を知ることになる…。
日本の四季のうつろいの美しさは、昭和初期から平成の現代まで変わることはない。時代は違っても、幸せになろうとまっすぐに前を向く女性たちの美しさもまた、変わらないものだ。夫の死、女性の社会進出、病の中での出産、さらにシングルマザーになる決意。6人の女性をとりまく環境はさまざまだが、彼女たちの人生を勇気付けているのは、母の愛情の深さである。物語は大河ドラマというほど大げさなものではないが、ひとつひとつの物語が丁寧で、演じる女優たちも力まずにさりげない演技をみせているのが好ましい。竹内結子演じる薫のエピソードには、思いがけない謎が仕込まれて哀愁を漂わせ、田中麗奈演じる翠の物語では、社会の中での女性の立場と意識を改めて考えさせられる。登場時間やセリフは少ないが、最初と最後に登場する蒼井優の古風な表情が忘れられない。母娘なのに6人の女優たちがまったく似てないのはご愛嬌だし、男性の影があまりに薄いのは苦笑してしまう。キャスティングは、まるで某化粧品メーカー主催のプロモーション・ビデオのよう。それでもこんな企画は女性を元気にしてくれるし、映画ファンへのプレゼントのようで何だか嬉しい。
(渡まち子)