FLOWERS -フラワーズ- - 福本次郎

FLOWERS -フラワーズ-

© 2010 映画「FLOWERS」製作委員会

◆夫への愛や尊敬は結婚してからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれることを教えてくれる。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 花嫁衣装に身を包んだまま自宅を飛び出し、あぜ道を走り出すヒロイン。親同士が決めた結婚にどうしても納得がいかず、こらえてきた感情が爆発する。それは真実の愛をいまだ知らない若さと自由への憧れ。このプロローグが、旧弊に満ちた戦前から21世紀の自立した女性の系譜の始まりとして象徴的に描かれる。愛や尊敬は所帯を持ってからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれると教えてくれる。

 昭和11年、女学校を出た読書を好むハイカラな娘・凛は頑固な父と従順な母のもと、婚礼を控えていた。しかし、当日になっても気持ちに整理がつかず家を飛び出してしまう。彼女の「自分の未来は自分で決める」という気質は3人の娘・2人の孫娘にも確実に遺伝していた。

 昭和11年の農村風景は記録にしか残っていないだろうが、凛の娘たちの青春時代と同時代の記憶を持っている人はいまだ多く健在のはず。そんな観客が見ても膝を打つほど、街並みから服装まで細部を再現するこだわりは見事。特に凛の3女・彗が2番目の子を産む決意をしたころ流行したヘアスタイルや狭い団地、岩崎宏美の歌など昨日のことのように思い出してしまう。映像もその時々のフィルムの質感を出し、 ’77年が舞台の彗のエピソードでは当時全盛の2時間ドラマのようなざらついた感触を出していて、懐かしさについ胸が熱くなる。

 神社の境内で母に見つかった凛は、母に父との生活について尋ね、幸せは与えられるものではなく、自ら努力してつかみ取るものだと教わる。そして初めて顔合わせをした花婿とともに家庭を築く決心をする。作品は彼女の強い意志が脈々と現代にまで受け継がれていることを語っているのだが、6大女優をそれぞれ並列のエピソードの主役にしたため人物像の掘り下げが甘く、蒼井優が演じた凛の物語以外は訴えるのもが希薄。特に竹内結子や田中麗奈は添えもの扱いだったのが残念だ。

福本次郎

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