映画ファン待望の電子書籍(スマートフォン向けアプリ)

PVC-1 余命85分 - 映画批評なら映画ジャッジ!

◆野心的アイデアをほめたい(65点) 叫びたい2009

 新鋭監督は、野心あふれるほうがいい。85分間リアルタイム進行、一回もカットなし(全編ワンカット)。そんな個性的な実話映画『PVC-1 余命85分』を撮った、コロンビアのスピロス・スタソロプロス監督のように。

 南米のコロンビアで信じがたい事件が発生した。ある農場主(ダニエル・パエス)の家に強盗グループが押し入り、家族を監禁。だが金がないと知った犯行グループは、あろうことか一家の妻(メリダ・ウルキーア)の首に、時限爆弾入りの極太リングを装着して去ったのだ。

 ここまで一度もカットされず話は進む。そしてその後も、ずっと1台の手持ちカメラで事件の顛末が描かれていく。舞台は室内でなく屋外、しかもいくつも場所を変えるという困難な撮影を、綿密な計画通り成し遂げたこの監督の手腕には驚かされる。『ロープ』(48年)で同じ挑戦をしたA・ヒッチコックもびっくりである。

 85分間、ひとつのミスもせず演技をし続けた役者たちも凄いし、彼らをカメラの死角から追い掛け回したであろうスタッフたちもしかり。カメラは不快な手ぶれを極力抑え、引いたり寄ったりあらゆるアイデアとテクニックで、画面にメリハリをつけていく。久々に職人的な香り漂う画面作りを見て、私は満足を得た。

 中でも圧巻なのは、警察と待ち合わせた場所まで、一家が必死に移動していく一連のシークエンス。普通の映画なら5秒のモンタージュですむところだが、すべてリアルタイムで動き続けるこの作品の場合、これだけで迫力満点。遅々として先に進まぬ様子が、爆破までの貴重な時間の浪費を感じさせスリルが増す。

 その途中で一家は車に乗ったり、林の中を近道したり、小川を渡ったり、はては手押しのトロッコに乗ったりする。このトロッコを押す人たちの姿に観客はまた驚く。コロンビアの、これが現実なのか、それとも演出なのかはわからないが、凄みあるリアリティを感じるはずだ。

 こんな首爆弾まで用意するなど、目的がさっぱりわからない犯人たちも不気味この上ないが、これは現実にあった話。コロンビアの、絶望的なまでの治安の悪さ、発生する犯罪の桁違いの凶悪さには誰もがショックを受ける。それを伝えたかったのだとすれば、本作は大成功だ。やってきた警官の爆弾処理方法の、素人でもわかる稚拙さなど、ほとんど絶望しか感じられないほど。

 もう一段か二段、こちらを驚かす仕掛けがあれば、もっと高い点をあげたいところだが、いずれにしてもレイトショー限定にするには惜しい力作だ。

映画ジャッジ

スポンサードリンク