第9地区 - 岡本太陽

◆今夏最も予想外なSF映画がついにそのベールを脱いだ!(85点)

 地球に宇宙人がやって来る映画はいくつもある。巨大な宇宙船でやって来るという事は彼らは人類以上の高知能を持っている証拠だ。だから『E.T.』の様なキャラクターは実は現実味に欠ける。また、宇宙人にも地球に来る様々な理由がある。それは『未知との遭遇』の様にわりと友好的な場合もあるが、『インディペンデンス・デイ』の様に地球侵略を目論んでいる場合もある。例えば、地球に用事が全くなかった場合はどうだろう。そんな事ももちろんあるのだ。

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンが製作し、彼の秘蔵っ子である南アフリカ出身の映画監督ニール・ブロムカンプが監督を手掛ける映画『第9地区(原題:District 9)』は機知に富み、自由な感性に満ち溢れたSF作品だ。本作では虫型のエイリアンが登場する。彼らは空を覆う程の大型の宇宙船で地球にやって来たが、帰る術がなくなってしまい、地球から出る事が出来なくなっている。それゆえ、エイリアンは地球人に対し下手で、地球人の外者である彼らに対する行為はどんなものであるか、というのが本作の大きなテーマとなっている。

 物語はドキュメンタリースタイルで始まる。UFOが1980年代に南アフリカのヨハネスブルグ上空に出現し、それ以来その宇宙船は20年間ずっとそこに停滞している。長い年月が経っており、もう宇宙船はヨハネスブルグの景色の一部と化してしまっている。人間は宇宙船に乗り込んだ時に、不健康なエイリアン達を発見する。そして彼らを地上に連れ出し、難民キャンプに住まわせる。ヨハネスブルグの住民達はそんなエイリアンに不快感を隠しきれない。なぜなら、彼らは住民の税金を使って生活しており、難民キャンプはスラム街の様な悪の巣窟と化してしまっているからだ。

 本作はアフリカで生まれ育ったブロムカンプ監督の体験が基になっており、アパルトヘイトを彷彿とさせる「エイリアン立入禁止」地区が街にあったり、主に白人の兵士達にエイリアンが乱暴な扱いを受ける事や、エイリアン用の難民キャンプの様子が不衛生で現在もアフリカ各地にあるものと風景が酷似している等、アフリカの社会問題を色濃く映し出している。アフリカは社会的問題を多く抱えている。そこにエイリアンがやって来た事で、それらの問題はもっと複雑化してしまうのだ。

 これだけ聞くとシリアスな映画を想像してしまうだろう。しかし、本作ではロボットも登場し、爆撃や銃撃シーンも映画が佳境に入ると劇的に増える。また、主人公ヴィカスに扮する南アフリカ人俳優シャルト・コプリーはイギリス人俳優リッキー・ジャーヴェイスを思わせる柔軟でコミカルな演技で魅了する。ヴィカスはいつも笑顔を振りまくMNUという多国籍政府のエージェント。彼は9地区(ディストリクト9)と呼ばれる難民キャンプからエイリアンを10地区へ移動させる計画を任されているのだが、仕事中の不注意から、家族、エイリアン、軍隊、そしてナイジェリア人ギャング等を巻き込む人類が経験した事ないとんでもない体験をしてしまう。

 本作に登場するエイリアンは人間よりも遥かに力も強く、知能も高い(はず)。しかし彼らは地球にいる間は人類の言いなりになるしかなく、肩身の狭い思いをしながら汚いキャンプで生活している。はじめは彼らは乱暴で礼儀を知らない生物であるかの様に映るのだが、物語が進むにつれ、彼らに好意を抱く様な展開になっており、そんなエイリアンに対しMNUは勝手に人間の名を与えたり、彼らに対し生物実験や破壊兵器の実験を繰り返している様が描かれ、人間の偽善的な姿が逆に露呈されてゆく。歴史や道徳を盛り込んでいるため、わたしたちが本作から学ぶべき事は意外にも多いのだ。

 本作の予算は約30億円と言われている。これは大作SF映画にしてはそれ程大きい額ではないが、これはピーター・ジャクソンが今回長編映画初監督となる才能あふれる若いニール・ブロムカンプ監督が自由に働ける様に用意出来た精一杯の制作費。あまりの自由な物語なため、次に何が起こるか分からず、わたしたちをスクリーンに釘付けにする。また、激しい展開の中で心に触れるシーンもあり、正直、30億ででここまで見事な作品が出来るとは、ブロムカンプ氏恐るべしと言うしかない映画である。

 南アフリカが舞台のSF映画と聞いても、過去にそういった作品が世間に出回っていない事から、本作の新鮮度は世界中が開眼させられた『ブレアウィッチ・プロジェクト』さながら。また、ピーター・ジャクソン製作という事と予想だにしない展開がB級映画ファンやSF映画ファンを驚嘆させる。そして主人公ヴィカスとキャンプに住むエイリアンのクリストファー・ジョンソンが軍の攻撃に対抗する姿に人類とエイリアンとの友情を感じずにはいられない、『第9地区』は今夏最も予想外な映画だ。

岡本太陽

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