Disney’s クリスマス・キャロル 3D - 小梶勝男

◆ロバート・ゼメキス監督の3Dアニメーション。デジタル3Dとパフォーマンス・キャプチャーの技術が見事に生かされた映像が素晴らしい(80点)

 デジタル3D技術に最も適しているのは、モーション・キャプチャーであると思う。実在の人物や物の動きをそのままアニメーションにする技術だ。実写とアニメの中間ともいえる。実写の3Dもかなり進歩したが、まだ違和感がある。変に飛び出すものを強調する映像ばかりになってしまったり、深刻な場面などで人物の腕がにゅっと前に出てくるのがおかしかったりする。逆にアニメーションの場合、3Dと親和性が高すぎて目立たない。最近のアニメは2次元のものを立体的に見せる3Dアニメ(ややこしいが、メガネをかけて見る立体映像のことではない)が主で、2Dでも立体的に見えるので、3Dの効果が今ひとつ分かりにくいのだ。

 本作ではパフォーマンス・キャプチャーという技術が使われている。ロバート・ゼメキス監督が「ポーラ・エクスプレス」(2004)のために開発したもので、モーション・キャプチャーの一種と考えていい。従来よりも微妙な仕草や表情が捉えられるといい、ジェームズ・キャメロンの「アバター」にも採用されている。本作の最大の見所は、ゼメキスが「ポーラ・エクスプレス」から「ベオウルフ」(2007)と追求してきたパフォーマンス・キャプチャー及びデジタル3Dの技術がどこまで進歩したか、であろう。その成果は驚くべきものだ。これまでに見たことのない映像を作り上げることに成功している。

 ストーリーはチャールズ・ディケンズの原作に沿っている。頑迷な金貸しスクルージがクリスマス・イブの夜、「過去」「現在」「未来」の3つの亡霊に導かれて改心するまでを描く。

 説教臭が鼻につく物語だが、ゼメキスが見せる映像は、そんなことをすっかり忘れさせてくれるほど凄い。冒頭から、ロンドンの街をキャメラがワンカットで自在に動く。立体的で躍動感があるスペクタクルな影像は見事と言うほかない。全体は暗いトーンで、光と影の表情を巧みに表現する。アニメーションとは思えない深みがあるのだ。スクルージの屋敷の質感、ロンドンの街並みの精緻さ。そしてスクルージが空を飛ぶ場面の圧倒的な立体感と迫力。家ごと空を飛ぶ場面では、床が透けて眼下に街並みが見えるが、まるで本当に空から見ているようにリアルに感じられた。スクルージが小さくなって、馬車に追いかけられる場面のアクションも素晴らしい。また、壁に取り付けられたベルを手前に、奥にスクルージを配置した絵など、実写ではキャメラを置く場所がなくて撮ることが出来ないカットも随所にあって、デジタル映像の特徴が最大限に生かされている。ゼメキスが追い求めたデジタル3Dとパフォーマンス・キャプチャーの技術は、まるで観客がライド・アトラクションを体験しているような臨場感となって、見事に結実していた。

 頑固じいさんが夢を見て自分の行く末に不安を持ち、いい人になるというだけの話でも、映像だけで十分に作品は成功といえるだろう。今回は吹き替えで見たので、全7役を演じたというジム・キャリーの声の演技などは残念ながら分からなかった。3Dだと字幕が見づらく、どうしても吹き替えになってしまう。それでも、この臨場感は映画館でしか味わえない。是非、3Dで鑑賞して欲しい。

小梶勝男

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