『ブリジット・ジョーンズの日記』のクリエーター達が贈る新作(70点)
『フォー・ウェディング』『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』、とヒュー・グラントが出演するイギリスが舞台のロマンティック・コメディ映画がある。どれも多くの賞にノミネートされ人気の高い作品達だ。そしてそのクリエーター達による新しい映画が先日公開になった。『definitely, maybe』という作品なのだが、今回の舞台はなんとニューヨーク。恋愛だけにはとどまらないなかなか素敵な作品だ。
現代、ニューヨークはマンハッタン、30代のウィル・ヘインズ(ライアン・レイノルズ)は妻と離婚しようとしていた。ある日10歳の娘マヤ(アビゲイル・ブレスリン)を学校まで迎えに行くが、その日は性教育の授業が行われたらしく、子供達は大混乱。どうやって生まれて来たかを知ったマヤは家に帰り、どうやって自分の親が出会ったかを知りたがる。ウィルは1992年、ウィスコンシンからニューヨークに来る前の事から話し始める。そして愛した3人の女性を通して自分がどんな人物だったかを娘に語るのだった…。
監督はアダム・ブルックス。彼はメグ・ライアン主演の『フレンチ・キス』『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月』等のロマンティック・コメディ映画の脚本を多く執筆している。主演は最近引っ張りダコのライアン・レイノルズ。コメディ作品での演技がなかなかうまい俳優である。今後の期待作は2009年公開予定の『X-MEN ORIGINS: WOLVERINE』だ。また彼の娘役に『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンが扮する。演技は上手だが、正直メディアでの彼女の露出には見飽きた今日この頃。そして『ナイロビの蜂』でアカデミー助演女優賞を受賞したレイチェル・ワイズ、『スパイダーマン』『40歳の童貞男』のエリザベス・バンクス、『ウェディング・クラッシャーズ』のアイラ・フィッシャーが主人公ウィルの恋人達を演じる。
『ノッティングヒルの恋人』『ラブ・アクチュアリー』等の製作者による映画と唱っている本作だが、それらと決定的に違う点は、娘に過去を語るゆえにストーリーの大半が回想シーンということだ。おそらく多くの親が直面する様にライアン・レイノルズ扮するウィルも子供にどうやって妻と出会ったかを聞かせる。離婚すると分かっていながら自分の恋愛について娘に聞かせるウィル、その行為は残酷な様だが、やはり人は本当に愛した人との恋愛は忘れない。この物語の場合、ウィルは1992年までさかのぼり、そこから話をするので、結婚に至までの真実を娘に伝える事は主人公にとってなんらかの挑戦の様でもある。
ウィルは3人の女性の名前を実際とは違う名前を付けて自分のストーリーを語る。ウィルの恋人エミリーをエリザベス・バンクス、サマーをレイチェル・ワイズ、エイプリルをアイラ・フィッシャーがそれぞれ扮するのだが、ニューヨークを舞台にロマンスが繰り広げられるという点から、『definitely, maybe』は1人に焦点を当てた男バージョンの『セックス・アンド・ザ・シティ』の様にも感じられる。
ロマンティック・コメディと聞くと、男性はもしかしたら毛嫌いしてしまうかもしれない。しかし、この作品はコテコテのそれとは一線を画す。それはおそらく脚本が優れているからだろう。アダム・ブルックス作の中でもクオリティが高い。ロマンティック・コメディというと、お伽話の様な展開を推測するだろうが、このストーリーは結構現実的な展開。変わらない愛を描いているわけではなく、愛も形を変えるというとても正直な点に共感出来るストーリーだ。圧倒的に観客には女性が多いと思うが、『メリーに首ったけ』の様に男性にも受け入れられるはずだ。
ニューヨークを舞台に繰り広げられるシングルを主人公にしたストーリーは数あれど、今回の様な設定はあまりなかった。よくありそうなストーリーと思って観ると、予想を裏切られるに違いない。この作品に登場する主人公は不完全、また彼が恋する相手も皆不完全で、細かい点やちょっとした台詞に泣かされる。これはキラキラしたロマンティック・コメディというよりはセンチメンタルで悲しいストーリーだ。最後の方には大きなサプライズもあり、もっとヒットしても良さそうな映画だが、全米で初登場は5位とまずまずの出だし。宣伝次第では大ヒットの可能性を秘めていた映画だ。
(岡本太陽)